桑原甲子雄

morohiro_s2006-12-16

桑原甲子雄のいわば再デビュー作、『東京昭和十一年――桑原甲子雄写真集』(晶文社、1974年)を古書で手に入れる。前々から手許に置いておきたいと思っていた本だけど、なかなか機会がなくって。
はじめて箱入りの形で見る。池波正太郎、佐田稲子の懐古的な文章が箱に刷られてあって、桑原再デビュー(戦前はアマチュア写真家として知られたが、戦後は写真誌編集者に専念していた)が、本人も含めて、徹底的に「ノスタルジア」によって彩られていたことがよく分かる。
これは桑原の戦前の写真――おもに浅草、銀座――に10数人の人による「写真を読む――わたしの東京」という文章が付されているのだが、ほとんどの人がノスタルジア一辺倒のなか、中平卓馬のみ、敢然と「鏡の中の三〇年代を愁い顔して振り返るな」と言い放つ。格好いい。