『物質文化リーダー』

The Material Culture Reader

The Material Culture Reader

手持ちの物質文化論に関するリーダーを紹介(物質文化論については、id:morohiro_s:20051119#p1)。リーダーにはいろいろある。このリーダーの場合は、物質文化に関するトピックを9つ立てて、それぞれに一本ずつ論文を収録し、それぞれ論文の著者にそのトピックに関する解説を書かせるというスタイルを採っている。「芸術の人類学」「視覚文化」「風景と政治学」という僕自身の興味にばっちり嵌っているトピックが立てられていて喜んでいる。以下の通り。
ヴィクター・ブッチリ編『物質文化リーダー』

  1. ヴィクター・ブッチリ「序論」
  2. 隠喩、物質性、解釈
    • クリストファー・ティリー「ワラ島のカヌーの隠喩的変容」
  3. 芸術の人類学
    • スザンヌ・クッチラー「太平洋地域における結び--輪と結び目の間に」
  4. 視覚文化
    • クリストファー・ピニー「1980、90年代の中央インドにおけるポートレート写真」
  5. 遺産と文化財
    • マイケル・ローランド「起源の力--文化的権利に関する質問」
  6. 風景と政治学
    • バーバラ・ベンダー「争われた風景--中世から現代まで」
  7. 記憶と闘争
    • ニコラス・J・ソーンダース「金属の身体、記憶の殻--〈塹壕アート〉とリサイクルされる大戦」
  8. 建築と屋内空間
  9. 消費

で、面白いのは、「視覚文化」が物質文化論のトピックとして挙げられていること。他では、一つの領域として掲げられているものが、この領域においては下部領域となっていること。これって面白いことだと思う。こういう感じで、新領域同士がお互いを下部領域とすることによって、ゆるやかにつながっていくのがいいかなと思う。はてなブックマークのタグみたいなもんで、普段はそれぞれ色んなところにいながら、タグをクリックするとまとまるというような。「視覚文化論」も「風景スタディーズ」もそういうもんでいいかなと思う。僕自身は。独立国家を立ち上げて、固有の領土を持つんじゃなくって、いろんな国に勝手に入り込んで、移動しながらキャンプをするようなかたちがいいんじゃないかなと思っている。これって中途半端だろうか。
初出:id:morohiro_s:20051126#p2