八木一夫展

明日から京都国立近代美術館ではじまる八木一夫展(http://www.momak.go.jp/Yagi_j.html)の内覧会に出かけた。300点余の大回顧展。陶土という素材と時には対峙し、あるいは離反していこうとする過程を再確認した。ガラス、ブロンズなどの陶土以外の素材における実験も面白かったが、特に興味ぶかかったのは、版画作品であった。それ自身作品として成り立っている「オブジェ焼き」を版として刷ったもの。木目を組み合わせたフロッタージュ風のもの。刷るたびに変化するであろう「動版画」。ブロンズ作品も、陶土による原型を「版」としたものと理解できるかも知れない。モノと痕跡。
ただ、展示としては、ほとんど説明なしのモノグラフ。作品の強度が凄いから、それに接するだけでいいという意見もあろうが、「オブジェ焼き」というものが、どのような情況で登場したのか、他の前衛美術運動との関わりはどのようであったのか、あるいは当時の陶芸界からはどのような反応があったのかなど、歴史的な位置づけがもう少しなされた方が親切なのではないかと思った--とくに、はじめて作品に接する観客のことを考えるのなら。