制度の住人

精華大の院生、陳維錚(Tan Juichen)君の展覧会、「制度の住人」(@石田大成社ホール*1)の最終日に間に合う(→http://previous.i.am/を参照)。仕切られた小部屋では、ヴィデオが上映されている。マレーシアのいろいろな信号機が青から黄色、赤、そしてまた赤へと変わる様子が淡々と写されている。そこで写っていた最新式の信号というのが可愛い。赤の人型ピクトグラムは動かないが、青になるとピクトグラムが歩き出す。赤が近くなると走り出すというもの。
メインの広い展示空間の奥に赤く輝く「止まれ」の信号。その手前に台形に囲まれた斜線が光で描かれている(あとで聞くと消防署などの前にある停車禁止のサインらしい)。しばし佇んで見ているが何も起こらない。インタラクティヴ・インスタレーションと書いてあったなと思って、信号に近づいていくと、ようやく青に変わる。変わったなと思って立ち止まると、赤が点滅しだし、また「止まれ」。???・・・。なるほど。「制度の住人」である限り、変化は起きないワケか。
インスタレーションを見に行くと、いつもどこまで近づいていいのか迷う。近代における絵画展示の「制度」がつくづく身にしみいっているのだろう。だから今回も、近づくとき、光の台形を邪魔しないように近づいてしまう。光を自分の身体が遮って、影が落ちること、すなわち自分の影が作品を侵害することを避けてしまっているのだと思う。でも踏み込まなければ変化は起きないし、作品は「作品」の身分をはみ出ることはない。でも、このインスタレーションが作品として成り立つためには、「作品」を侵害しなければならないワケだ。う〜ん。なかなか面白い。交通法規という制度と美術展示という制度のダブル。
あと、信号機自体が素晴らしかった。シンガポールから取り寄せたらしいLEDのもの。思ったより光が強い。ずっと見ていたら眼がおかしくなりそう。タン君に聞くと、マレーシアの強い日中の光でもはっきり見えるようにではないかという。近くに寄ってみるとプラスティック製である。ピクトグラムが描かれている面には、近くで見ると大量の抵抗などの部品や、いろんな文字が書かれている。格好いい。ちょっと欲しいな。

*1:久しぶりにディレクターのアマノさんにも会った。→http://www.j-kyoto.ne.jp/ishida_hall/