今日の一曲"梅田からナンバまで"

上田正樹サウス・トゥ・サウス『シンパイスナ、アンシンスナ』所収、1992年、パイオニアLDC(初出:上田正樹と有山淳司『ぼちぼちいこか』所収、1975年、徳間音工)
すっかり好々爺(というには早すぎるが)めいた風貌で霊園の宣伝に登場している上田正樹だが、かつては関西ブルース/ファンク・シーンの中心人物であった。屈指のリズム・セクションを擁した強力バンド、サウス・トゥ・サウスを率いて、粘りのあるR&Bを披露していた(らしい。いくらなんでも僕はその時9歳だったから、知らん。でも同じ75年に発表したライヴ・アルバム『この熱い魂を伝えたいんや』でその様子は窺える)。その上田がギタリスト有山淳司(現在:じゅんじ)とともに発表したアルバムが、「ぼちぼちいこか」。ラグタイム・ブルースというか、ジャグ・バンド風というか、非常にレイド・バックしたいい感じのアルバムだ。
さっき「知らん」とか書いているが、実は知っていたともいえる。小学校の時、友達がこのアルバムにはいっている「とったらあかん」を口ずさんで(?)いて、僕も憶えてしまったのだ。歌詞は聴いて貰えば分かる。それをニュー・オーリンズR&B流のセカンド・ラインに乗せて語るわけだ。小学生にとっては、どきどきわくわくする詞なわけで、しかもオチまで付いている。今でも空で言える。
それはともかく、今日の一曲は「梅田からナンバまで」。この曲は有山がリードをとる。今も変わらぬへにゃ〜とした声で、軽快にスウィングして「散歩しましょう/御堂筋でも/梅田からナンバまで」と唄う。このソフィスティケーションはなんだろう。憂歌団にしても、ブレイクダウンにしても、ウェストロード・ブルース・バンドにしても、みんな基本的に非常にあか抜けている。関西ブルースが泥臭いというは、単なるステレオタイプに過ぎないのではないか。
残念なことに、『ぼちぼちいこか』のCDを現在手に入れるのは、なかなか難しいらしい。僕もカセットでしか(しかも聴き倒したもの)持っていない。その代わりに、サウス・トゥ・サウスが1991年に行った再結成ライヴ(これがまたいい)から。中途で「ぼちぼちいこか」から5曲演奏している。有山がエノケン風に唄うそのヴァージョンで。

この曲の試聴用サンプルは、アマゾンにはアップされていません。

"シンパイスナ,アンシンスナ?サウス・トゥ・サウス’91ライヴ"