今日の一曲"Original Faubus Fables”

チャールズ・ミンガス『ミンガス・プレゼンツ・ミンガス』所収、キャンディド、1960年
ある楽器の不在について。ミンガス(b)、エリック・ドルフィー(as, bcl)、テッド・カーソン(tp)、ダニー・リッチモンド(ds)。そうピアノがないのである。あの同時に10音(肘とか使えばもっと)も鳴らせる楽器がないことで、妙に落ち着かない。普通ならここでコードが決まり、ここではオブリガードが、というところに何もないのである。その部分、他の楽器同士の音のぶつかり合いが際だつ。ピアノとは、万能であるとともに、ある意味で邪魔な楽器なのかも知れない(でもジャケットではベースを後ろに立てかけてピアノの前に座る御大の姿が)。そういえばオーネットでも、アイラーもピアノなしだったな。あの楽器は、一種の桎梏だったのかも知れない。その反対に60年代の山下洋輔トリオはベースなし。ピアノとベースは喧嘩するのか?
ところで曲は、人種差別主義者として有名な(もともとはどちらかといえばリベラルだったらしいが)アーカンソーのフォーバス知事を罵倒する曲。唄う、というより吠えまくっている。フォーバス知事についての詳しいことは、→3-7 『フォーバス知事の寓話』:リトル・ロック・ハイ・スクール危機
あと、ドルフィーの独特の音の出し方が素晴らしい。変なリッチモンドの太鼓も。ライヴ盤だが、ミンガスが観客に拍手を禁じているため、全然ライヴっぽくない(ミンガスのMCはあるが)。これはよくミンガスの狷介さを伝えるエピソードとして語られるが、毎曲の終わりに「拍手はナシね」「拍手我慢してくれてアリガト」とか入るから、結構ネタに聞こえてしまう。

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Presents Charles Mingus

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