明治の石版画

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印刷・発行は、神田区通新石町六番地の有山定次郎。絵には「山本画」との落款がある。明治24年3月25日に印刷・出版されたとある。
明治の石版画は、最近ようやく研究が進み、注目されはじめてきた。研究の集大成として、2002年には、神戸市博物館で「描かれた明治ニッポン:石版画〔リトグラフ〕の世界」という展覧会が開かれ、別冊として論文、データベース付きの素晴らしい図録も発行された。なかなか強烈な作品が多いのだが、その展覧会の中でも特に異彩を放っていたのが、この絵のような子供の図である。この絵そのものは、展覧会にもデータベースにも載っていない(新発見か、もしかして贋作か・・・。まあ、この辺りで贋作はないだろう)。しかし、類似の絵、すなわち子供三人が、それぞれ独特の表情をして遊んでいるものは、何点もあった。
類似作が多くあることから、好まれた画題であることはわかる。でも今の僕たちの目から見たら、何となく無気味な赤ん坊である。可愛いと思っていたのか、あるいは何らかの吉祥図のようなものであったのか。当時、どのように受容されていたのかは、謎である。
ちなみに原画を描いた「山本」とは、山本芳翠であるとの説もあるという。ホンマカイナ。