地図と摩天楼

id:kebabtaro:20050425#p1さんのところで、グーグル・マップが面白いとの記事があり、見てみた。たしかに地図と衛星写真が切り替えられ、面白い。ニューヨークにいた頃に住んでいたアパートメントを探してみたら写っていた。Riverside Driveと103丁目の角のビルディング。京都風に言えば「百三条通川端西入ル」である。ここ→Google Maps
実は、この建物はなかなか歴史のあるものである。マスター・アパートメントといって、この辺りでは一番高いビルだった。1929年に建造された、エンパイア・ステート・ビルディング(31年)やクライスラー・ビルディング(30年)に先行する、摩天楼のアーキタイプといわれている。25階建てなので、いわゆる摩天楼の規模ではないが、尖塔型のデザインの走りらしい。この建物→http://www.emporis.com/en/wm/bu/?id=114874。入り口の鉄格子がアール・デコ風で、なかなか風情あるものであった。ポール・ゴールドバーガー『摩天楼―アメリカの夢の尖塔』でも、言及されていた(たしか)。
知り合いの紹介で入ったのだが、大学へは歩いていけるし、地下鉄の駅も近い。古いビルなので、ちょっとした不具合はあったが、住み心地よく、彼の地を離れるまで、6年くらい、ずっとここに住んでいた。ステューディオ(すなわちワンルーム)だったけれど、角部屋で眺めが良かった。
一階にはギャラリーと劇場があった。ギャラリーは、テキスタイル専門(Gail Martin Gallery)で、斯界では有名なところである。また劇場は、はじめは演劇をしていたが、のちにアフリカン・アメリカンの教会になった。よく着飾った人々が集まり、説教や音楽が漏れ聞こえたものであった。
もともとは、仏教系の新興宗教の集団生活の建物として建てられたらしい(噂だけれど)。食事は、2Fのホールに集合して摂っていたらしい。だから部屋のキッチンは、後付けなので小さかった。
地下では殺人事件があったという噂(都市伝説か?)もあったし、築70年だけになかなか面白い建物であった。