リヒター展

急に思い立って、金沢に「ゲルハルト・リヒター:鏡の絵画」展(http://www.kanazawa21.jp/richter/index.html)を見に行ってきた。結論から言うと、非常に楽しい体験であった。そんなに出品点数が多い訳ではなく(《アトラス》とかはなかったし)、じっくりと見ることが出来た。「鏡の絵画」という副題の通り、随所に置かれた鏡やガラスが非常に効果的であった。特に一番大きな展示室に置かれた重ねられたガラスに、展示されているアブストラクト・ペインティングと観客が同時に映り込んでいる様は素敵であった。子供たちが結構多かったのだが、ガラスの前で喜んでポーズを取ったりしていた。d:Arata:20050927#p2も参照。
展覧会の内容もさることながら、妹島和世西沢立衛の設計になる美術館が良かった。抜けるように白いホワイト・キューブなのだが、それぞれの展示室ごと広さも天井高も違っているのがミソ。天井の高い部屋では、青空の絵を高いところに展示してみたり、円形の部屋には、反射するグレイ・ペインティングを、どことなくロスコ・チャペル(行ったことないけど)を思わせるような仕方で展示したり。天井の磨りガラスも綺麗だった。それから、感じられる軽さ。木場や中之島の美術館はどうもでかくて広くて固くて重い(そして権威的な)ように感じる(いくら光が沢山入っていても)。それに比べてこの美術館は適度に小さくて軽い。気分良かった。
これも面白かったコレクション展(スゥ・ドーホーのインスタレーションとカールステン・ニコライの写真が気に入った)と、市民ギャラリーでやっていたホイットニー美術館のコレクション展(http://www.kanazawa21.jp/ja/04event/event_one.php?id=114)を見て、ミュージアム・ショップで出たばっかりの展示記録集(→http://www.kanazawa21.jp/ja/03news/richter_kiroku/index.html)。などを購入して、それから、歩いて5分(でも坂道)の石川県立美術館へ。
やっていたのは、現在改築中のサントリー美術館のコレクション展(http://www.ishibi.pref.ishikawa.jp/information/exhibition/exhibi_suntoryi01.html)。展示替えで《泰西王侯騎馬図》は見られなかったが、《洛中洛外図》や伝狩野山楽の《南蛮屏風》をはじめ、近世絵画の面白いのがいっぱいあった。《放屁合戦絵巻》とかも。
でも、でもですよ。ハコがね、問題なんですよ。多分70年代くらいに建てられたもので、よくある地方の公立美術館。なんか暗くて、妙に大理石が使われていて、でも天井のエアコンはむき出しで……。客も少なく、寂しかった(まあ、21世紀美の方は市民がタダの日だったというのもあるけど)。でも、仕方ないか。当時は、そういうのが「美術館」だったのだろう。
買ってきたのは、展覧会図録以外に、『21世紀のミュージアムをつくる--金沢21世紀美術館の挑戦(『美術手帖』増刊、2004/10)』、『ART IT』第9号(杉本博司インタヴュー、清水穣による杉本評、グラフィティ特集など→http://www.artit.jp/japanese/2005fw.html)、「15〜20世紀のロシア美術:イコンと絵画」展図録。