四角形メモ

グレマスの本が一冊(『構造意味論―方法の探求』)、精華大にあったので借りてみた。この本は、グレマスが「意味の四角形」という図式を提示する前に出たもので、まだ四角形は出てこないが、その前段階といえるものが出ている。
グレマスが、まず採り上げるのは、ヤコブソンによる「有標/無標」の対立である。これは「ある/ない」の関係なので、「s/-s」と表される(そうなっているらしい)。
ところが、「男/女」、「大/小」などは、「ある/ない」だけでは説明できない。ここでグレマスが持ってくるのは、V・ブレンダルによる意味素の分類である。ブレンダルはこれらを、「s/非s」と表し、それを「積極的/消極的」と性格づける(しかしこの例、ジェンダーと関わってくるな)。「男/女」はともかく、「大/小」の場合には、その間に「中」が入ってくる。これをブレンダルは、「中立的」と名付け、それはsでも非sでもない第三項(挿入意味素)であるという(で、「彫刻」が「風景/建築」の挿入意味素となるのか)。またフランス語の指示代名詞においては、人称詞「on」と非人称詞「cela」の間に人称詞でも非人称詞でもありうる「il」が入ってくる。これは「sでもあり、非sでもある」という点から「複合的」と呼ばれる(これがクラウスの図式における二つの軸になって、「位置-構築」という挿入意味素になる)。
で、グレマスは、「s/非s」の二項対立からなる基本構造を「意味素範疇S」と名付けた上で、次の表のように、ヤコブソンとブレンダルの構造をくっつける。

  • 積極的=s(意味素sが存在すること)
  • 消極的=非s(意味素非sが存在すること)
  • 中立的=-s(sも非sも存在しないこと)
  • 複合的=s+非s(意味素範疇Sが存在すること)

なるほど、あと一歩で四角形になりそうだ。以上、途中報告。