ネコと人間

ヒトと動物の関係学会の公開シンポジウムに出かける。自分自身の研究とは関係なく、タダの猫者として参加。

  • 渡辺千香子氏「古代メソポタミアの帝王とライオン」。氏のことは、彼女とかつて同僚だった二人の研究者からいろいろと聞いていて、楽しみにしていた(多分、一回ちらっと紹介されたような記憶があるが、曖昧)。古代アッシリアにおいて、王のメタファーとして散々使われるライオンが、何故王によって狩られるのかという問題。ライオンを殺す権限は王にのみ許されたものであり、殺す行為が王権を象徴的に支えるといった内容。
  • 井野瀬久美恵氏「ネコの目から見た大英帝国:『虐待から愛護へ』の謎」。19世紀のイギリス帝国といえば、横浜写真の研究の際にいろいろ調べて以来、興味は恒に持っているのだが、これが面白かった。「動物虐めの国」であったイギリス*1が、1770年代頃から1830年代にかけて、なぜ「動物愛護の国」になったのかという問題を、奴隷解放、監獄改革、精神病院改革、公衆衛生観念の進展など--さらには啓蒙主義的、博物学的な計測するまなざし--が同時代にあることを指摘した上で、巨大な植民地を抱える大英帝国の「慈悲深い帝国」「解放する帝国」「文明化する帝国」というセルフ・イメージの構築の一環として位置付ける。えらく面白かった。これは、19世紀の旅行写真のベースにある「文明化の使命」とも大いに関係がある。研究と関係ないどころではなかった。語り口も明快で、井野瀬氏のファンになってしまった。色々本を買ってみよう。御自身の飼い猫も多数プレゼンに登場して、相当の猫者のようである。

ディスカッションは失礼して、伊勢丹でいろいろお惣菜を買い込む。デパ地下っちゅうのは、ありゃ買いすぎてしまうね。ヨドバシと一緒かな。

*1:桂朝丸(現ざこびっち)のネタみたい。ちなみにその辺りについては、東ゆみ子『猫はなぜ絞首台に登ったか (光文社新書)』が詳しく面白い。ブログも発見→東ゆみこのウェブサイト