美学美術史とアカデミア

菅豊さん(http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~suga/)とid:monodoiさんのブログで、民俗学のアカデミアにおける立ち位置が問題となっている。この二つのブログでは、「民俗学」というディシプリン自体の現状がしばしば話題となっていて、門外漢としては、勉強となることが多い。

  1. http://suga.asablo.jp/blog/2005/12/26/190852
  2. どの分野ならば危機感がないのか? - はかもと(無縁彷徨)は引っ越しました
  3. http://suga.asablo.jp/blog/2005/12/28/191945
  4. 名こそ惜しめよ? - はかもと(無縁彷徨)は引っ越しました

顧みれば、僕のまあ一応本籍地といっていい「美学・美術史・芸術諸学」(科研のエントリではこの名前)も、そんなにメジャーな研究領域ではない(確か美術史学会の会員数と中古文学の研究会の会員数って変わらないって聞いたことがある)と言う点で、似ているところはある(違うところも当然あるが)。といって僕自身は、さほど「危機感」を覚えている訳ではなく、「ヴィジュアル・カルチャー」とかいっている位だから、ディシプリンの溶解も良い方向に向かうのならいいんじゃないかと思っている口だけど、ちょっと興味を持って調べてみた。
まず日本学術会議http://www.scj.go.jp/ja/info/member/member_20_name.html)だが、慶應の前田富士男氏が「哲学」として入っている。もう一人、東大の青柳正規氏が「史学」として入っているが、氏の場合は「歴史学」や「考古学」としてメディアに登場する場合も多いので微妙。でもおそらくこの二氏が美学、美術史を代表するのだろう。
で、面白かったのは、リクルートの進学ネットの学ぶ分野を探そうという頁。「美学」も「美術史」も「芸術学」もなんもない。そりゃマイナーだわ。「美学美術史の研究者です」といって、「どんな絵を描かれるんですか?」と返されたことがある人は多いだろう。ほとんど認知されていない研究領域なのであるということを再認識した。
じゃあ、どこにあるかというと、人>哲学・宗教学のところにサブ領域として、美学があり、芸術・表現>美術のところに、制作系にまじって「造形学」「造形美術」という耳慣れない名前で、美術史がある。あと、文化>日本文化学に日本美術史があって、じゃあ国際>国際文化学西洋美術史や東洋美術史などがあるのかと思えば、これがない。他に入ってそうな文化>歴史学芸術・表現>デザインには影も形もない。音楽学や文芸学は、芸術・表現>音楽芸術・表現>文芸学などに分散しているという感じ。おそらく、今後さまざまな大学における学部学科再編成の波のなかで、研究対象別にバラバラになっていくのだろう。これまでみたいに、文学部のなかに確固たる専攻として独立してあるという状況ではなくなるのだろうと感じた。それがいいことか悪いことか、まだよく分からないけど。でも、「実証」と「現場」のみに偏ってしまうのは、問題があると思う。
これは、もしかしたら日本のアカデミアにおける「美学美術史」という、欧米から見たら特殊な枠組み(欧米では両者は完全に独立している場合が多い。東大などでも別れているけど)とも関係があるのかも知れない。この特殊性やそのメリット/デメリットについて僕自身が感じていることは、いずれ書きつぐつもりではある。