痕跡のパリンプセスト

morohiro_s2006-03-20

土壁に刻まれた相合い傘が、風化し、文字が判別不可能になったもの(右は微かに読めるが)。刻まれた痕跡の上にさらに風雨など気象の痕跡が上書きされたと云える。昨日の発表でも、痕跡がパリンプセスト(羊皮紙は、一度書かれた文字を消して何度も再使用されたという)に喩えられていた。
ただし、この相合い傘を「痕跡=インデックス的記号」というのには慎重でなければならない。「相合い傘と恋人達」がその記号の指示対象となる場合には、この記号はインデックス的なものとは云えないだろうから(アイコン的記号とシンボル的記号の複合と云えよう)。これを、人の身体による文字を刻むという運動を指示対象として考えてはじめて、それは「痕跡」と見なすことができるのだろう。