清音濁音

東京論その後 - はかもと(無縁彷徨)は引っ越しましたのコメント欄であるように、柳田国男は「ヤナギ・クニオ」であって、「ヤナギ・クニオ」では決してない。そしてその濁らないところに、柳田を考える上での重要なポイントがあるというのは、僕も読んだことがある。id:monodoiさんは、福田アジオ氏が言っていたと書いておられるが、僕が読んだのは、それだっただろうか、また別の著者によるものだっただろうかid:monodoiさん、福田氏の文献情報ご提供頂ければ感謝)
柳田は兵庫出身だが、特に九州では名字などを読む時、濁らないんだということを知ったのは、多分、連載はじまった直後くらいの『釣りバカ日誌』だったと思う。主人公のハマちゃんが、課長に怒られて、「ハマキ」と言われるたびに、「九州では、ハマキです!」と逆ギレするという繰り返しギャグが印象的だったから。
九州が濁らないのと逆に、京都(関西一円だとは思うけど)では、単語の各所がやたらと濁る。「天気がええから洗濯(センク)」したり、子供が「今日は球技大会(イカイ)や」とはしゃいでいたり(京都の老人は「デート」に行くらしいし)。以前、あるディープな関西人の教授が、学会の懇親会の席上で、マイクに向かって「本日は、○学会全国イカイにおいでいただき」と挨拶され、大爆笑してしまったことがある。
かくいう僕も「自転車」を「ジンシャ」と発音する癖がある。全国レヴェルではどうやら「ジテンシャ」らしいと気付いたのはいつのことだっただろうか。京都弁やからしゃあないなと思っていたら、まわりの発音をよく聞いてみると、みんな「ジテンシャ」と発音していた。確かめてみると、どうやら母から伝わった、途轍もなく局所的な発音だったらしい。今でもたまに「jidensha」と入力して、「寺田社」などと変換されて悩むことがある。
携帯電話のコマーシャルを見ていたら、大塚愛が「テレビータイ」と発音していたのも笑ったな。

  • この話題は、もともとは、東京と関西における「ひ」と「し」の混同がもとで思いついたものなんだけど、金沢育司という方が、相当詳しく書いている→サ行とハ行の揺れ。「しち」→「ひち」だけではなく、「それで」→「ほんで」とか、「しなされ」→「しなはれ」とかも同じだということには、気づかなかった。
  • 混同といえば、丹波篠山出身の友人によると、丹波(和歌山もそうらしいが)では、「ザ行」が「ダ行」で発音されるらしい。「デンデンわからん」とか「甘いおデンダイ」とか。で、小学生とかだと、「デンデン」と書いてしまうらしい。これって、なんか色々と膨らんでいきそうな話だな。発話と書記の問題、正書法の問題、「言文一致」の問題とか。