バーク・コレクション展

岐阜やら広島やら東京やら、あちこちに巡回していたニューヨーク・バーク・コレクション展(MIHO MUSEUM | I.M.Pei 設計の美術館。古代エジプト,ギリシャ・ローマ,アジア等世界の優品と日本美術の優品を展示)に行ってきた。海外における日本美術コレクションでは有数のもので、今回見て、改めてよく集めたもんだな、と再確認した。
海外における日本美術コレクションの傾向っていうのは、やはり日本美術に関する言説を当然色濃く反映するものであって、そういった視点から見てみるのも面白い。すごく大雑把に言うと、海外の日本美術コレクションとは、明治期の浮世絵とか民具中心の一種「民族誌」的なコレクションから、それらを排除し仏像、仏画水墨画、やまと絵、狩野派など、日本美術史の正統派とされるものにシフトしてきたという歴史がある。「民族学」から「美術史」へというシフトといっても良い。日本における美術史のカノンに沿ったコレクションへと変わっていくわけ。ミセス・バークが、浮世絵版画には興味を示さず、肉筆浮世絵のみを蒐集対象とするというのも、一種の「真正性」の追求なんだろう。
当然、美術史の言説がシフトしていくにつれて、現在もコレクションの様子は変わりはじめている。ボストン美術館(MFA)が絵葉書コレクションを購入したり、ボストンおよびスミソニアンが大量に横浜写真のコレクションを買ったというのもその証だろう。以前、スミソニアンのフーリア美術館に行ったとき、大きな派手派手の薩摩焼の大壺なんかが展示してあって、おそらく博覧会かなんかに出たもんだろうけど、こういう正統的な「日本美術史」に嵌らないもの--「真正」ならざるもの--が、ニュー・アート・ヒストリーやヴィジュアル・カルチャーに関する言説とともに、改めて注目されるようになったんだな、と変化を感じ取ったものだ(ずっと「土産物」として倉庫の奥にしまわれていたんだと思う)
バーク・コレクションについては、コロンビア大学で日本美術史を講じておられた村瀬美惠子先生(昨日久しぶりにお目もじした)のクラスで何回も行ったので、展観されているもののほとんどを見ていたことに、改めて驚いた。懐かしいというか、なんかID試験を思い出して、ちょっと冷や汗もの。