モダン・パラダイス展

東近美と大原の「名品」を集めた展覧会。と聞いたときにはあまり食指が動かなかった。むしろ常設内での特別展示、「ばらばらになった身体」の方に興味を持っていったのだが、見てみると、これがなかなか面白かった。
テイト・モダン的と言ったらいいのかな、時代別、地域別ではなく、東近美、大原の所蔵品がテーマ別に分けられている。まあ、流行といえば流行か。テーマは、大雑把に言うと、「光」、「痕跡」、「表現」、「超現実」、「パラダイス」といったもの。たとえば第一部「光あれ」には、モネと菱田春草が比較され、マティス村上華岳、スティーグリッツ(《イクィヴァレント》シリーズ。素晴らしい!)、デ・クーニング、杉本博司などが並べられるといったもの。分類に多少の無理はある(母体が二美術館のものと限られているから仕方ない)ものの、だらだらとキャノン的に「名品」を並べられるのに比べると断然に刺激が違う。東近美、さすが頑張っているって感じ。
ただ、これが成功しているかどうかはもう少し考えなくてはいけない。時代別、地域別の「美術史的」、啓蒙的な展覧会に比べ、この手の展示法は、直観的で、とっつきやすいかのように言われることも多い。「教養」として詰め込まれるのが苦手な観客にもアピールするのだ、と言われる。でも、もしかしたら、こういう展示を喜ぶのって、頭の中に美術史のクロノロジーやキャノンが一応入っている僕みたいなスレッカラシの方なのかも、と思ってしまった。平日の午前中ということもあって、来ていたのは結構教養主義的なおじさま、おばさまが多く、多少困惑気味のようにも見受けられたから。とはいっても、たとえば美術史的な知識はさほどなくても、実際に現代アートに興味ある層や、あるいは制作者などには刺激的だと思う。僕自身は好きでした。制作系の学生には特にお勧め。
ちなみに本来の目的であった「ばらばらになった身体」も、モダン・パラダイス展の番外企画と考えていいのかもしれない。ここでもスティーグリッツ、出色。ライフ・マスクもあり。河原温の「浴室」シリーズ、はじめてまとめて見たが、連続で見ると、なんとなく榎本俊二の『ゴールデン・ラッキー』に見えてきた。