大阪の表象
「大阪は、下品で無遠慮だけど、暖かくて、形式ばらず云々」っていう表象は、あらゆるところに出回っているし、それをさらに関西の芸人達が自己表象のかたちで流布させているわけだけど、言うまでもなくこれは一面的であって、近世から近代にかけて、あれだけの繁栄を誇った大都市にはさまざまな面がある。最近は、「心斎橋モダニズム」展などで、クロース=アップされるようになってきた、「洗練されて洒脱な大阪」という一面もそのひとつであろう。いとし・こいしの漫才などには、その大阪が垣間見える。もちろん、「これこそが本当の大阪だ」って言ってしまうと、一面的になるのだけど。
僕にとって、「大阪の洗練」を代表する歌は、なんといっても「梅田からナンバまで」。
- アーティスト: 上田正樹,有山淳司
- 出版社/メーカー: 徳間ジャパンコミュニケーションズ
- 発売日: 1999/11/25
- メディア: CD
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以前(金絲猴香烟 - 蒼猴軒日録)でも書いたように、こんな良いアルバムはない。徳間さん、これを廃盤にしとくのは、罪と言ってもいいよ(前はカセットでしか持ってなかったけど、結局高い金出して、CD買った)。
歌詞については→ラストテーマを参照
「梅田からナンバまで」というトポグラフィカルな曲名で、歌い出しの「今日は朝から雨」で状況設定したあと、「いやな天気」という表出的なことばで、聴く人を歌い手=発話者の視点に引き込み、「いつものようにこの道を通って」恋人に会いに行く。そして御堂筋を「散歩しましょう」というわけだが、ここで、曲名で提示された「場所」が、「空間」として立ち上がるのだ(ド・セルトー風にいえば)。で、聴き手は歌い手とともに、御堂筋を歩くこととなる。
御堂筋に行くたびにこの曲を思い出す。こういう大阪もあるんよ、実際。
手に入りやすいのは、91年のサウス・トゥ・サウス(「ミナミからアメリカ南部」って意味)の再結成ライヴ。
"シンパイスナ,アンシンスナ?サウス・トゥ・サウス’91ライヴ"
- アーティスト: 上田正樹&サウス・トゥ・サウス,上田正樹,サウストゥサウス
- 出版社/メーカー: パイオニアLDC
- 発売日: 2000/03/23
- メディア: CD
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ウクレレ記法でコード進行を書いてみよう。
今日は朝から雨 いやな天気やけど
もうぼちぼち出かける時間
いつものようにこの道を通って
さあ君に会いに行こう
待ち合わせに遅れないよう
君と会ったら傘さして
散歩しましょう 御堂筋でも
梅田からナンバまで
ウクレレで弾いてもいいと思う。多分。
さっき気が付いたんだけど、御堂筋をキタからミナミへ、雨の中歩く歌といえば、欧陽菲菲の歌った「雨の御堂筋」(71年)がある。「梅田からナンバまで」のレコード化は、75年だから、「雨の御堂筋」を踏まえているのかもしれない。