小川信治展

NMAO:国立国際美術館での小川信治展:干渉する世界にようやく行ってきた。友人達からもいい評判は聞いていたし、学生からも「まだ行ってないんですかぁ」とか言われて、慌ててラス前に駆け込み。
たしかに評判通り。相当に興味深い展覧会だった。自律的に成立している「風景」あるいは「絵画」という統一体に手を加え、余分に描き足し、あるいは要素を消去する、ことによって、統一体に裂け目を入れるという行為は、風景という問題系を考える上での重要なヒントとなりそうである。キュレータの平芳幸浩さんの書いている多元宇宙/パラレル・ワールドという概念も注目。
さらには風景がずれて他の風景につながっていくというアイデアは、今考えている「コレクションとしての風景」という問題ともつながりそう。統一体のように見える「風景」に実は破れ目があり、そこから他の統一体につながっていく訳で、風景が統一体であるという概念自体に疑義を呈していることになる。そういえば、上記の学生の発言は、授業でミリオラマを見せていた時に出たものだった*1
絵画の技術を純粋に愉しむのもアリかな。フォトモンタージュやデジタル処理でやりそうなことを、肉体で描いてしまうという凄み。肉筆の結果、「モアレの風景」シリーズなどは、写真を「絵」に近づけるピクトリアリズムに似てきてしまう。また、「Without You」シリーズのフェルメール《デルフトの眺望》なんて、どこが消えているのか分からなかったし……。


この展覧会の図録の他に、名古屋大学の博物館で行われた展覧会の図録、『家族の肖像――レイモンド・チョーサーと三つの家族』も購入。展覧会については、家族の肖像/展覧会について。あっ、秋庭史典さんも関わっているんだ。


小川信治氏のウェブサイト→OGAWA, Shinji's official web site。工事中ですが。

*1:ミリオラマとは、細長いカードが24枚あって、それをどのように組み合わせて並べても「風景」として完成するという視覚遊戯装置。僕の持っているのは、以前友人がイギリス土産でくれたものだけど、次のサイトで売っているのも発見→http://www.hyakuchomori.co.jp/topics/koputa_0511/koputa_0511_top.html