京都国際マンガミュージアム

開館から一ヶ月、ようやく行ってきた。本務校が市との共同作業でつくったところ(ボクは直接は関係していないものの)なので、はやく見ておこうと思いながら、なかなか行く機会がなかった。

元・龍池小学校京都市:お知らせ(京都市情報館はアドレス(URL)が変わりました)の建物を利用して作られたミュージアム。校舎が昭和初期のもので、アール・デコな匂いも、モダニズムの匂いもあって、うまくリニューアルされている。一見の価値あり。以下も参照のこと。

特別展、「世界のマンガ展」も面白かった。日本のマンガの歴史が簡潔にまとめられていたし、鳥獣戯画とか、北斎漫画とかと近代的なマンガを本質論的につなげる言説も、さして前面に押し出されていたわけでもなかった*1。『団団珍聞』、『トバエ』や『東京パック』、さらには宮武外骨関係の『滑稽新聞』や『スコブル』が展示されていたのは感動モノ。
日本のマンガ誌の創刊号をずらりと並べた展示も、相当面白かった。何回も図版で見てた『少年マガジン』や『ガロ』の創刊号はもとより、4コマ専門誌やレディース・コミック、ポルノ・コミック(そういえば最近『エロマンガ・スタディーズ―「快楽装置」としての漫画入門』というのも出たし)などなどのジャンル誌もきちんと押さえられていた。
ただ、運営部外者として勝手なことを言うと、やっぱり、マンガというメディアとミュージアムというハコとの齟齬はあった。基本的にミュージアム(もっと正確に言えば、観者が巡回するギャラリーというシステム)というシステムは、タブロー/額絵、すなわち大西廣氏の言葉を借りると「カベ的なメディア」――複数での受容が可能――に一番向いているものだと思う。一方、マンガ、とくにストーリー・マンガは、典型的な「ホン的なメディア」――基本的に個による受容――であって、一部のカートゥーン(一枚モノのマンガ)を除くと、ミュージアム展示には、どうも嵌らない。これは、一枚物の浮世絵は飾りやすくとも、絵本、黄表紙の類はミュージアムには向いていないというのと同じ。やっぱ、マンガはライブラリーやアーカイヴに向いているんだと思う。
とはいえ、手に取って閲覧することができる本や、デジタル閲覧システムもそこここに置いてあるなど、上記の齟齬をなくす努力もされている。まだまだ、第一回目の展覧会なので、今後に期待したいところ。
そういう意味で、「マンガの壁」という企画――あちこちの通路の壁が古今のマンガ本で埋め尽くされている――は、面白い。今度時間があったら、ゆっくりと昔のマンガを読みふけりたいものである。いつ「時間」があるのか、分からないけど。あぁ、学生の時にこんな施設があったらなぁ。


一点だけ。キャプションが日本語だけというのは、ちょっと問題があるかと思う。こないだ、京都在住のフランス人コミック作家に、ミュージアム訪問を勧めたけど、彼は日本語がまだまだ分からないので、多分きつかったんはないかな。とりあえずは英文による解説、将来的には中文、ハングルによる簡単な解説は併記した方がいいと思う。大変だろうけど。

*1:もちろんそこかしこで、その言説は見え隠れするのだけど=昔書いたマンガの始源? - 蒼猴軒日録、およびManga into Art History - 蒼猴軒日録も参照