グラック&ハルトゥーニアン

コロンビア大学の日本史教授、キャロル・グラック氏の単著がついに翻訳された。

歴史で考える

歴史で考える


ひとつのまとまった著作を翻訳したものではなく、70年代から2000年代にまで、さまざまなところに発表された、とくにメタヒストリー的な意識を持って書かれた諸論文を編集したもの。「民衆史」という方法を、アナール学派やミクロストリアなどとの共時性について考察したものや、戦後史学のナラティヴの分析にはじまり、「江戸」「明治」「昭和」といったさまざまな時代概念がどのように構築されてきたのかに関する論文などが所収されている。日本近代における伝統の創出 - 蒼猴軒日録で紹介した論集に収められている「江戸の発明」もついに日本語で読めるようになったので、広く推薦しやすくなった。「江戸」に関わることを研究している向きは、必読文献だと思う。


グラック先生のクラスは、「メタ・ヒストリーとモダニティ」というセミナーしか取れなかったけど、あのクラスで学んだことって、今でもしみじみ重要なことばっかりだったと思う。こないだNYでほんの少しだけお会いできたけど、ゆっくり話せなかったのが返す返すも残念。


そういや、↓も翻訳がついに出たのだった(まだ上巻だけだけど)

近代による超克〈上〉―戦間期日本の歴史・文化・共同体

近代による超克〈上〉―戦間期日本の歴史・文化・共同体

ボクがNYを離れたあと、グラック&ハルトゥーニアンという強力な共同ゼミ(コロンビア&NYUの合同で)が行われていて、相当濃かったと聞いたことがある。