暁斎展


げっ、そんなに人気あるのか、暁斎。まあ、シーズンだったし、プロモーションも結構派手だったからかな。今日は待ち時間なし。でも結構混んでいたので、小さい絵はパス。


で、暁斎展。

展覧会っていうのは、作品がどのように語られ、どのように表象されるのかを見に行くものだから(少なくともボクにとっては)、その意味では非常に興味深い展覧会だった。なにしろ「奇想」一色で表象されてきた絵師を、アカデミックな絵師として狩野派の系譜に再定位するっていうリヴィジョンを前面に出した展覧会だから。というわけで、版本や浮世絵版画は一切なし。キュレーターの山下善也さん(どの程度、前任者の狩野氏と分担したのかな?)は、まあ正統派中の正統派の日本美術史家であり、狩野派の研究者として知られる人だから、言いたいことは分かる暁斎の正統的美術史からの「掬い上げ」なんだろう。ボク自身はそうした「掬い上げ=救い上げ」に関しては批判的だけど)
まあリヴィジョンといっても、「奇想」は対象、内容の問題であって、「狩野派」ってのはまあ形式/様式の問題だから、別に奇想的なものを狩野派の様式で描くことは、当然可能であるから、むしろどこに重点を置くかっていう話。
で、キャプション(例の若冲展以来の絵を邪魔する、ガラスに貼った半透明のシートに書かれたキャプション)では、執拗に「狩野派」と書かれていた訳だけど、なにしろ、どのように表象しようと「奇想」が強いからね。


出展作は面白いモノばかり。やっぱり見物は、「冥界・異界、鬼神・幽霊」の部だね。強烈。それから新富座のために4時間で描きあげたっていう《妖怪引幕》!


でも、個人的に最も興味があった「近代へ架ける橋」という副題の部分は、展覧会の中ではいまいちはっきりしなかったのが残念。


本展図録の他に、河鍋暁斎記念博物館の図録『酔うて候――河鍋暁斎と幕末明治の書画会』も購入。


暁斎の面白いところとは、私見だが、やっぱり全てに二面性を持っているところだとおもう。狩野派で浮世絵、奇々怪々な鬼神などの表象とオーソドックスな花鳥画、近世と近代と、とにかくあらゆる意味で越境的な画人だったんだろう。


じゃ、今度は「マンガとしての暁斎」という言説を見に行くか。