ロス・ファブロソス・カディラクスと「スカ・第三の波」

こないだ、朝起きたらなぜか頭の中に「レヴォリューション・ロック」が回っていた。ふらふらとコンピュータに辿り着き、寝ぼけたまま、クラッシュのヴァージョンはもちろん、オリジナルのダニー・レイのもの、さらにはメロディーを換骨奪胎したビーツ・インターナショナルの「ブランド・ニュー・ビート」まで連続で聴いた。
London Calling Revolution Rock Excursion on the Version


それでも飽きたらず、Youtubeを探してみたら、面白いバンドが「レヴォリューション・ロック」を演奏しているヴィデオに出逢った。ロス・ファブラソス・カディラクスというバンドで、名前で分かるとおり、ラティーノのバンド。スペイン語でノリノリで歌いまくる。アルゼンチンは、ブエノス・アイレス出身らしい。早速CDを取り寄せてみるとなかなかこれが面白かった。

Vasos Vacios

Vasos Vacios


高速スカをベースに、パンク、ファンク、ダブ、サルサ、さらにアルゼンチンのビートなども混ぜた狂乱祝祭的スカ系ミクスチャー・バンドである。1986年デビューで、今でも活動しているらしい。


考えてみたら、彼らも1980年代後半からはじまったスカの「第三の波」(ジャマイカのスカを第一、2トーンを第二とすれば)の一部だったのだろう。アメリカではアンタッチャブル(82年デビュー)にフィッシュボーン(1985年デビュー)、トースターズ(1985年デビュー)、イギリスではギャズ・メイオールに先導されたオーセンティック・スカ再興の動き(トロージャンズのデビューは87年だが、その前からイヴェント「ギャズズ・ロッキン・ブルース」で活躍)、フランスのマノ・ネグラ(88年デビュー)。日本でも、オーセンティック路線でのスカ・フレイムズ(88年デビュー)東京スカパラダイスオーケストラ(89年デビュー)、そしてフィッシュボーンの影響大のレピッシュ(87年デビュー)ポルカをベースにしたブレイヴ・コンボ(デビューは79年と古株)アイルランド音楽をベースにしたポーグス(84年デビュー)とかも併せて考えてもいいかもしれない。


そして、カディラクスもまさにこの世界的なスカ・リヴァイヴァルのひとつだろう。


もちろん、その基盤には、2トーン勢によるスカとパンクの融合がある訳だが、あくまでもイギリス内での動きだった2トーンとは違い、この第三の波は、なんといっても世界中に波及したのが面白い。スカのグローバライゼーションか。カリブ海の小さな島で生まれ、そこでも70年代以降は忘れ去られた音楽が、20数年のちに世界に急に広まったんだもんな。で、その音楽が、それぞれの地域の音楽を取り入れるかたちで変容していくという楽しさ。


勿論、その後もスカは、スカ・コアのかたちを採ってまた蘇生する訳だけど、その辺りはそんなに聴いてないのでなんとも言えない。ただ、大塚愛の「さくらんぼ」とかプッチモニの「ちょこっとLOVE」みたいなスカ歌謡がなんの違和感もなく受容されているという状況を見ると、2トーンだけではなく、その後の「第三の波」はもう少し評価してもいいんじゃないかと思う(ちなみにレゲエ歌謡の歴史については、次が詳しい。テクノポップ関連情報 [テクノポップ] All About