『ダゲレオタイピスト--銀板写真師』

鳩山郁子『ダゲレオタイピスト』 : 村上リコの本棚経由で、こんなマンガがあることを知って、取り寄せ、読んでみた。

ダゲレオタイピスト―銀板写真師

ダゲレオタイピスト―銀板写真師


中編が二つ所収されていて、その中のひとつが表題と同じ「ダゲレオタイピスト」というマンガ。ロマンティックで耽美でゴスっぽい絵(装釘も凝った作り)で、少女マンガ系のリテラシーが低い人間としては、なかなか読み進めづらかったけど、面白い話だった。http://www5d.biglobe.ne.jp/calico/04-@spangle/c-books/pigeon-dague/s-dage-top00.htmを辿っていけば「予告編」を読むことができる。


重要な役割を果すのが、生きている人間は撮らず、没後写真しか撮らないダゲレオタイピストというのが面白い。主題が、生と死と写真と記憶って、まさにIZU PHOTO MUSEUMでのバッチェンの展覧会(IZU PHOTO MUSEUM|展覧会)そのまま。「潜像」を現像することが、生と死の問題と重ね合わされられる。(「没後写真」については、没後写真 - 蒼猴軒日録を参照のこと)。


作者の鳩山郁子という人がどういう人か、ちょっと検索したところではイマイチ分からないが、相当よく調べている。ダゲレオタイプの製造過程はともかく、「没後写真」というものの存在まで知っているというのは、いろいろ読み込んだに違いない。ダゲレオタイプのケースを「手札判写真のケース」と言わせているところ、没後写真をダゲレオタイプ以外にないとしているところ、ニエプスが「ダゲレオタイプ」の発明者と誤読する可能性のある記述など、トリヴィアルな細かいミスはあるものの、写真史に関する知識もしっかりある。初期写真に興味のある人には、お薦め。


【追記】作者に関する情報は、鳩山郁子 : 竹の階段に詳しい。そうか『ガロ』デビューか。