ルスタルの世界

ジャクリーヌ・ベルントさんから、以下のシンポジウムのお知らせをいただきました。

シンポジウム:フランス・コミックス作家ルスタルの世界―マンガとアートを渡す橋

  • 京都国際マンガミュージアムではこれまで、国内だけでなく、海外のマンガ文化を精力的に紹介してきました。特に、バンド・デシネ=BD(ベーデー)と呼ばれるフランス・コミックスの世界に関しては、様々な展覧会・イベントを開催し、その普及に努めてきました。
  • このたび、その文化横断的なテーマと、アーティスティックな画風で、世界的に注目されてきたBD作家ルスタル氏をお招きし、その作品とBDの魅力について知っていただくシンポジウムを開催します。
  • 愛するジャズや暗黒小説からインスピレーションを受けつつ、それらの雰囲気を、深みのある色合いの華麗な絵として再構成する「色彩画家」ルスタルの世界を知っていただくまたとない機会です。
  • シンポジウム構成・出演者
    • 【第1部】未訳のルスタル作品の一部を翻訳し、その内容をじっくりと紹介します。
      • 猪俣 紀子氏(BD研究者)
      • 原 正人氏(BD研究者)
    • 【第2部】「マンガ」と「アート」を橋渡しする役割も果たしているルスタル作品の魅力を、BD研究者、美学研究者とともに分析し、「マンガ/アート」の関係について考えます。※フランス語から日本語への逐次通訳を行います。
      • ルスタル氏(BD作家)
      • 吉岡 洋氏(京都大学大学院文学研究科教授[専門:美学芸術学])
      • ジャクリーヌ・ベルント氏(京都精華大学マンガ学部教授、京都精華大学国際マンガ研究センター副センター長、〔専門:マンガ/コミック理論〕)
  • ルスタル:プロフィール
    • フランスのコミック作家。大学で建築を学ぶ一方、絵を同人誌に掲載。1977年には、その別冊として初めての作品集を発表。同時期、フランスの音楽雑誌『Rock & Folk』にイラストを掲載。同誌の編集長だったフィリップ・パリンゴーが、後にルスタルの長年の原作者となる。1979年3月には、二人による初短編作「Blues」を『メタル・ユルラン』誌に掲載している。
    • 1980年から色彩に重点を置いた画風に移行するが、大学卒業後の1983年に兵役先として駐在したモロッコでの経験が、その独特な画風およびストーリーに非常に大きな影響を与えた。またこの頃から、吹き出しを一切採用しないナレーション中心の作品でも注目を浴びる。パリンゴーら原作者とのコラボレーションによるコミック作品は、一昔前の忘れさられがちな過去、例えば1950年代末のパリあるいは北アフリカに焦点を当て、映画や絵画、写真など、その時代を連想させる視覚表現を借りながら、読者の記憶作業を掻き立てると同時に、語られる出来事の「リアル」を疑問視させる。
    • アクション満載の主流コミックスとは違って、時間が止まっているかのような作風のルスタルは、明快な線描を特徴とする「タンタン」の作者エルジェや、夢の「リアル」を実感させるメビウスといったコミック作家に加え、マルグリット・デュラスの映画や、マックス・ベックマン、デイヴィッド・ホックニーといった画家からの影響が見て取れる。物語的作品の他に、一枚絵をも描き、画集や展示会の形で発表してきた。
    • 代表作に、1960年前後にパリで活躍しつつも結局麻薬で死んでしまったジャズミュージシャンを描いた「Barney et la note bleu」(1987)などがある。
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