山下啓次郎と奈良監獄

建築家、山下啓次郎の名前を知ったのは、ご多分にもれず孫に当たる山下洋輔の小説から。

ドバラダ門 (新潮文庫)

ドバラダ門 (新潮文庫)


山下は、山下啓次郎 - Wikipediaにもあるように辰野金吾の弟子で、司法省に勤め、全国にさまざまな監獄を設計した人である。


『ドバラダ門』でも再三強調されていることだけど、彼の設計による監獄が、まったく監獄らしくないのが面白い。この奈良監獄も、妙に可愛らしい。刑務所には無縁な過剰な装飾も素敵。「人を閉じ込めるぞ」という政府の意気込みが空振りしてしまう程に綺麗で可愛らしい。
その理由は、いろいろあるだろうけど、どうやらヨーロッパの建築様式を、表層だけ掠め取り、しかもスケール・ダウンしたかたちで、監獄という全く別のビルディング・タイプの建築に当てはめたところにあるのかもしれない。ツレアイも「テーマパークみたい」と言っていた。ただ、まわりに何もない高台に、煉瓦塀に囲まれた巨大な敷地がぽつんとある様子は、やはり無気味ではあるのだが。


そろそろ講義でミニアチュール/縮減模型論を話そうと思っていたところなので、いいタイミングでいい建造物を見ることができた。