『近代絵画と彫刻--1880年から現在まで:ニューヨーク近代美術館所蔵』

Modern Painting And Sculpture: 1880 to Present at the Museum of Modern Art

Modern Painting And Sculpture: 1880 to Present at the Museum of Modern Art

新しいニューヨーク近代美術館の所蔵名品(絵画・彫刻部門)図録『近代絵画と彫刻--1880年から現在まで:ニューヨーク近代美術館所蔵』を、先日知人に貰った。すっきりとまとめられている。これを読んだら、近代美術史が一目で分かるという仕掛け。ただ、当然「現在のMoMAが考える近代美術史」という留保が付く。もちろん、どんな「美術史」も、それを編んだ人間のヒストリオグラフィが反映されている訳だが、MoMAの場合は、編集主体があまりにも権威があるだけに、批判も含めて読みがいがある。いちど、アルフレッド・バーJr以来の歴代の名品図録と比較してみたい。とりあえず章立てを紹介してみよう。

  1. 近代の創始者たち:1880年から20世紀へ
  2. マティスピカソモダニズム:第1次世界大戦までのヨーロッパの美術
  3. 「主義」の時代:大戦間期モダニズム
  4. 大西洋を越えた近代:ヨーロッパとアメリ
  5. 現実的なもののアート:ポップ、ミニマル、1960年代
  6. 無題(現代):1970以降のモダン・アート

アメリカの美術館であり、1950年代以降の近代美術を牽引してきた存在としては、「大西洋を越えた近代(Transatrantic Modern)」の部分に力が入っているはずだが、まだ未読。ちなみに途中で出てくる「レアリスム」とは、当然クールベらのそれではなく、ノイエ・ザッハリッヒカイトやホッパー、あるいはメキシコのリベラ、シケイロスなどが含まれたものである。それから「crosscurrents」を辞書的に「反主流派」と訳したが、「一つの運動に属していない」作家のことだろう。しかしマティス一人で一つの運動と見なしているのは、さすがMoMAという感じだ。