『1900年以降の芸術--モダニズム、アンチモダニズム、ポストモダニズム』

Art Since 1900: Modernism, Antimodernism, Postmodernism

Art Since 1900: Modernism, Antimodernism, Postmodernism

以前(id:morohiro_s:20051011#p1)紹介した『オクトーバー』ご一行様、フォスター、クラウス、アラン=ボア、ブクロー編の『1900年以降の芸術』が届いた。オール・カラーで700頁あまりという大型の近現代美術に関する概説書である。序文としてあげられているのは次の4つの文。

  1. モダニズムにおける精神分析、方法としての精神分析
  2. 芸術の社会史:モデルと概念
  3. フォーマリズムと構造主義
  4. ポスト構造主義脱構築

さすがオクトーバー一派というようなイントロである。本文は、1900年、1901年と1年が1章(5-6頁)あるいは2章になっている(2003年まで)。それぞれの章で、その年および周辺の芸術運動および思想が紹介され、理論的な考察もなされるという構成である。たとえば、1935年の章では、ロトチェンコやザンダーの写真、デュシャンのボックスとともに、ベンヤミンの「複製芸術論」、マルローの「空想の美術館」が紹介される。あるいは、1971年の章では、リチャード・セラやロバート・スミッソンの作品とともに、クラウスの「彫刻とポストモダン」(『反美学―ポストモダンの諸相』所収)が紹介される。というように、作品と批評・理論を並行して学べるという意味で、非常に出来のいい教科書だと思う(分厚いけど)。アマゾンで買うと、日本円で8609円。「近現代の美術を学ぶ学生必携!」と言える値段ではないかも知れないが、すくなくとも研究室に一冊という感じだと思う。授業ネタにもなるし。
写真史に関しては結構詳しく触れられているし、おそらく従来の近現代美術の概説書ではまず無視されてきた社会主義リアリズムなども押さえられている。非欧米圏に関する記述はさほど目立たないが(具体は、紹介されている)。