『風景の人類学--場所と空間へのパースペクティヴ』

The Anthropology of Landscape: Perspectives on Place and Space (Oxford Studies in Social and Cultural Anthropology)

The Anthropology of Landscape: Perspectives on Place and Space (Oxford Studies in Social and Cultural Anthropology)

エリック・ハーシュ、マイケル・オハンロン編『風景の人類学:場所と空間へのパースペクティヴ』

  • 序:エリック・ハーシュ「風景:場所と空間の間に」
  1. ニコラス・グリーン「風景を見る:階級編成と視覚的なもの」
  2. ピーター・ゴウ「西アマゾニアにおける土地、人々、紙片」
  3. モーリス・ブロック「場所にはいる人々:明瞭性についてのザフィマニリ族の概念」
  4. クリストファー・ピニー「道徳的場所愛〔topophilia〕:インドのオレオグラフ〔油絵風石版画〕における風景の意義」
  5. トム・セルウィン「解放と補囚の風景:イスラエルの風景の人類学に向けて」
  6. キャロリン・ハンフレー「モンゴルにおける首領とシャーマニズムの風景」
  7. クリスティーナ・トーレン「祖先の場を見る:フィジーの土地に関する考え方の変容」
  8. ハワード・モーフィ「風景と祖先の過去の再生産」
  9. ロバート・レイトン「〔オーストラリア〕西部砂漠における土地との関わり」
  10. ルフレッド・ジェル「森の言語:ウメダ族における風景と音韻的アイコニズム」

ほぼ全員人類学者なのだが、美術史から一人、『自然のスペクタクル:19世紀フランスにおけるブルジョワ文化 The Spectacle of Nature: Landscape and Bourgeois Culture in 19th Century France』という好著の作者ニコラス・グリーンが入っている。これは非常に面白い本で、19世紀におけるパリという都市の変容と自然「風景」の構築の問題を絡めて批判的に論じる点で、相当勉強になった。18世紀からの名所版画集『古のフランスへのロマンティックかつピトレスクな旅』と19世紀における歴史的建造物の写真による記録プロジェクト、ミシオン・エリオグラフィックとの関係についての章など、横浜写真についての論文を書くときには相当参考にした。その内紹介したい。グリーンは、たしかグリゼルダ・ポロックのもとで学び、イースト・アングリア大学の講師をしていたのだが、本書所収の論文と『自然のスペクタクル』を脱稿後、両者の刊行を見ずに、エイズにより夭折したという。存命なら、おそらく視覚文化研究における風景論の旗手となっていたにちがいない。実に残念な話である。
しかし、こないだの『人類学と写真』(id:morohiro_s:20051219#p2)でもそうだけど、人類学系の文献って、全然知らない部族の名前が頻出して戸惑う。ググって調べてはいるが、読み方には自信がない。ジェル論文なんて、大阪の話かと思ったもん(ニュー・ギニアの部族らしい)。