デトロイト祭り

他にも二枚DVDが届いた。その一枚は、『永遠のモータウン [DVD]』。デトロイトに本拠を構えたモータウン・レーベルのハウス・バンドであったファンク・ブラザースのドキュメンタリーである。素晴らしかった。
モータウンに関しては、歌手や作曲者、プロデューサーに関しては色々語られ、認知されてきたが、そのバンドに関してはほとんど語られてこなかった。実際、僕もベースのジェース・ジェマーソン以外は名前も何も知らなかった。スタックスのブッカーT&ザMGズとか、フィラデルフィアのシグマ・スタジオのMFSBとは異なり、ファンク・ブラザーズはその名義でのアルバムもないし。
リード・タンバリンという井上順を揶揄するために使われているパート名が本当に活きるのが、このファンク・ブラザーズである。あのタンバリンの音なしにモータウンが語れるであろうか。まさにリード・タンバリンとしか言いようのないジャック・アシュフォードの妙技よ。
メンバーの半数以上は死に、残ったメンバーでの再結成ライヴとインタヴューで綴られるフィルムのなかで、生き残りのメンバーからのルサンチマン溢れる噺が哀しい。70年代のモータウン社のLA移転により、ファンク・ブラザーズのほとんどはデトロイトに置いていかれてしまうのである。
だから「永遠のモータウン」という日本語題は、ひどい誤訳といえよう。結局のところ、「永遠」ではなかったのだから。原題は、「Standing in the Shadows of Motown」、すなわち「モータウンの陰に居て」である。モータウンの栄光を讃えながら、一方では音楽産業の冷酷さを訴えているのである。それに対して、『永遠のモータウン』はないだろう。『モータウンの縁の下の力持ち』の方がよっぽどましだ。ほんまに。

永遠のモータウン [DVD]

永遠のモータウン [DVD]

で、もう一枚のDVDは、『モジュレーション [DVD]』。電子音楽の歴史を、ストックハウゼンや具体音楽から、テクノ、ハウス、ドラムン・ベースに至るまで総括したフィルム。相当前にVHSで取り寄せたのだが、規格が違って見ることが困難だったものを、ようやくちゃんとした映像で見た。ここでも、デトロイト・テクノデリック・メイなど)が採り上げられていたので、今日のDVD三枚はデトロイト祭りっていうことで。

モジュレーション [DVD]

モジュレーション [DVD]