近世/近代

中谷礼仁、中谷ゼミナール『近世建築論集 (acetate)』が到来 →編集出版組織体アセテート│近世建築論集
「近世」「近代」という時代設定をめぐる建築史学のヒストリオグラフィを問い、近世におけるさまざまな建築論の分析を通じて、日本の近代建築に対する新たな視座を提供する好著。
冒頭で、いわゆる「擬洋風」建築--大工の棟梁たちが、西洋風建築を建てたもの--に対する評価が、一方では「表層的な模倣」というネガティヴなもの、他方では「近代を先取る先進性/主体性」というポジティヴなものが重なり合い、「遅れているが進んでいる」という不思議な評価となっていることを指摘される。これは、近世洋風画/近代洋画の問題や、明治における写真術導入の問題にも重なる。ひいては日本における「近代」自体の問題にも関わる重大なことである。近代美術研究者は必読であろう。
そういえば、著者である中谷礼仁氏による「転用」に関する論議も興味深いものであった →「セヴェラルネス(事物の多様性を可能にする転用過程のメカニズム--歴史的住居の転用研究から」(『うごくモノ 「美術」以前の価値とは何か』)。

ちなみに、版元であるアセテート編集出版組織体アセテート│アセテートとは何か?)もユニークな組織であるようだ。