チェンバース

学生時代の先輩、fukayaさんがmixiでこのアルバムについて熱く語っていた。

Whims of Chambers

Whims of Chambers

昔も昔、もう20年ほど前、僕は西荻窪に棲んでいて、そこは殆ど雀荘のような状態でみんなが入り浸っており、いつも杯の音と麻雀牌の音がしていたというような状態だった。集まってた連中もみんなバンドをやっている連中ばかりだったので、つねに音は鳴っていた。というか家主の権限で僕の好きなものばっかり流していて、エディ・コクランやら、上田正樹+有山淳司やら、ジミ・ヘンドリックスやら、ミルクシェイクスやら、レヴォリューショナリーズやらが流れていた(何でも来いやな)。
で、そんな時に僕がコルトレーンのライヴ(その頃出た《マイ・フェイヴァリット・シングス》が2ヴァージョン入っている奴だと思う)を掛けたのを聞いて、fukayaさんがジャズに嵌ったんだという。へぇ〜。20年も経つと誰でもそうだと思うが、記憶ってのはええ加減で、僕はfukayaさんにジャズを教えられた(トゥー・ファイヴ進行とか代理コードとか)と思ってたんだが。まあ、あの頃はみんなが「このバンド知ってる?」とかいう感じで音楽を競うように教え合うという状態で、指数関数的に聴く音楽が増えていってた時期だったから、記憶が混迷するのも当然か。
で、ジャズが聞きたいというfukayaさんに、僕が貸したのがこのアルバムだったそうな。リーダーは、ベースのポール・チェンバースで、参加メンバーは、ドナルド・バード(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)、ホレス・シルヴァー(p)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)。手練れの上、みんな若くてイケイケドンドンな頃(ホレス・シルヴァーだけちょっと先輩って感じだが)。勢いが凄いんね。
当時はベース・ギターを弾いていて、憧れのベーシストの一人がチェンバースだった。餓鬼の時代に京都の白梅町のジャズ喫茶のマスターからチェンバースを仕込まれたのがはじまり。他のアイドルは、ドナルド・ダック・ダン(MG's)、花岡憲二(憂歌団)、ロビー・シェークスピア(スライ&ロビー)、矢沢永吉(キャロル時代)、ジャー・ウォブル(PiL)などなど。みんな丸くてぶっとい音で、目立つことはやらないんだけど、リズムをぐいぐい引っ張っていくっていうタイプ。ちなみに僕は下手だったんで、「引っ張っていく」んじゃなくって、単に「走って」いただけだった。ジャコ・パストリアスとかジョン・エントウィッスルとかブーツィー・コリンズとかチャールズ・ミンガス(ちょっとタイプは違うか)とかのハデハデのベーシストじゃなくって(勿論全員大好きなんだけど)、まる〜いタイプのベーシストに憧れたのは、チェンバースの影響だと思う。で、そういうベーシストになるために猛練習をしたかっていうと、そういう正統的な真面目なことはせずに音作りのことばっかりやっていた。ベース・アンプやイコライザーの仕組みや特性を本で勉強したり、ダック・ダンが「丸い」音を出すために弦は絶対にはりかえないっていうのを真似したり・・・。邪道?
このアルバム、久しぶりに聞き返してもチェンバースのウォーキング・ベースの牽引力は凄いね。流石「オール・アメリカン・リズム・セクション」の要。アルバムの完成度としては、Bass on Topが上だろうけど、勢いではこっちに軍配が上がる。フィリー・ジョーの「もっともっと」とあおりまくるスネア・ドラムのせいもあるかな。