コレクションのコミュニケーション図式

明日、学生がミュージアムスタディーズの先生と自主的にやっているゼミに参加してくれと言ってきたので、「えらい!」と参加することに。↓の第一章「見えるものと見えないもののあいだ」を読むらしい。もちろんコレクション論には興味があるので、喜んで参加。

コレクション―趣味と好奇心の歴史人類学

コレクション―趣味と好奇心の歴史人類学

で、僕もざっと読みなおし、思いついたことをメモ代わりに。
ポミアンの重要な点は、コレクションの「意味作用」に注目したところにある。すなわち記号論的な視点からコレクションを捉えているのだが、ということは、ロマン・ヤコブソンのコミュニケーション図式に当てはめられるんじゃないかと考えた訳である。
視覚文化にヤコブソンの図式を援用するというのは、もちろん僕の独創じゃなく、僕のアドヴァイザーだった岸文和師匠のお家芸である。詳しくは、『絵画のメディア学―アトリエからのメッセージ』の序章を参照のこと。で、岸図式は、基本的には単体のイメージをメディアとして捉えているのだが、コレクション自体が一種の意味作用を持つのであれば、この図式に当てはめることができるんじゃないかと考えたのだ。

  1. 発信者→蒐集者:個人コレクター、寺院/教会、ミュージアム(キュレーター)
  2. メッセージ→コレクション〔の意味?〕
  3. コンタクト→展示/陳列の場:ミュージアム、書籍/雑誌、ウェブ
  4. 受信者→観者/受容者/オーディエンス:神仏、死者、観客、コレクター自身
  5. コンテクスト→世界:ポミアンのいう「見えない世界」、文化的コンテクスト
  6. コード→分類学:宗教、アレゴリーの体系、博物学、美術史、歴史学、自然科学、経済


たとえば、ニューヨーク近代美術館の常設展の場合を考えてみよう。

  1. 蒐集者=インスティテューションとしてのMoMA
  2. コレクション=展示されている、あるいは収蔵されている絵画、彫刻の集合体
  3. 展示/陳列の場は、ニューヨークのミッドタウンにある谷口吉生デザインの建物
  4. オーディエンス=20ドル払って入場するモダン・アート好き+観光者
  5. 世界=近代西洋を中心とした美術
  6. 分類学=(MoMAの考える)西洋近代美術史

この例は、あまりベタすぎて面白くないか。他、中世の教会の聖遺物コレクション、驚異の部屋、小学生の夏休みの宿題で採集された昆虫、コンビニエンス・ストアとか、あるいはもっと広げてクラブDJなどを例に考えて見れば、もう少し面白くなると思う。

    • 問題=「世界」と「コレクション」の関係は、表象されるものとするものの関係だから、これがポミアンのいう「見えるものと見えないもの」の関係。コードは分類学(というか分類の基準/「ものの秩序」)でいいと思うが、コード化/解読の問題がどのように処理出来るかはまだ考えていない。コンタクトが「展示/陳列」ってのが、面白いんじゃないかなと思う。当然、コレクションの諸機能、すなわち喚情的、詩的、交話的、指示的、メタ言語的、能動的機能のそれぞれに何が当たるのかっていう問題も絡んでくるだろう。

とりあえず穴だらけだけど、アイデアだけ。