『写真・モノ・歴史:イメージの物質性について』

Photographs Objects Histories: On the Materiality of Images (Material Cultures)

Photographs Objects Histories: On the Materiality of Images (Material Cultures)


エリザベス・エドワーズ、ジャニス・ハート編『写真・モノ・歴史:イメージの物質性について』

  1. エリザベス・エドワーズ、ジャニス・ハート「序論:モノとしての写真」
  2. ジョーン・M・シュウォーツ「《カナダの美しき思い出(Un beau souvenir du Canada)》:モノ・イメージ・象徴的空間」
  3. ジェフリー・バッチェン「存在の消え失せる前に:写真と髪飾り」
  4. エリザベス・エドワーズ、ジャニス・ハート「混成の箱:ある『民族誌的』写真の箱の文化的伝記」
  5. グレン・ウィラムソン「意味の生成:図書館やミュージアムにおける物質性の転位」
  6. アリソン・ノードストローム「旅をする:タッパー氏一行のスクラップブックと彼らが語る旅」
  7. スーザン・レジェーヌ「写真付きトランプと植民地的隠喩:オランダの植民地文化を教える」
  8. ヌノ・ポルト「『祖先のまなざしのもとで』:植民地時代のアンゴラにおける写真とパフォーマンス」
  9. クレア・ハリス「輪廻する写真:チベット人と写真の関係のダイナミックス」
  10. ガブリエル・ハンガヌー「写真=十字架:あるルーマニア正教会の写真の政治的、信仰的生活」
  11. リチャード・シャフレン、マイ・ムライ「日本におけるプリクラ写真:社会的関係を枠付ける」
  12. ジョアンナ・サスーン「ディジタル複製技術時代における写真の物質性」

写真というものは、もちろんイメージ/視覚的なものであるのだが、一方では厚みを具えた「モノ」として存在している--ダゲレオタイプなどを手に取ったことがある人には実感として伝わると思う。当たり前のことなんだけど、ついつい看過されてしまうこの事実。この論集は、写真を単に視覚文化として扱うのではなく、「物質文化(Material Culture)」として扱う試みとして編纂されたものである。
編者の一人、エドワーズは、視覚人類学研究者で、ピット・リヴァーズ美術館の写真部長。以前人類学と写真 - 蒼猴軒日録紹介した論集、Anthropology and Photography, 1860-1920の編者でもある。彼女が関わっている本を見ていると、どうやら人類学/物質文化研究と写真研究/視覚文化研究を繋ぐ役割を果たしているみたい。彼女の編になるSensible Objects: Colonialism, Museums And Material Culture (Wenner-Gren International Symposium)Raw Histories: Photographs, Anthropology and Museums (Materializing Culture)も面白そうなので取り寄せてみよう。また、バッチェンによる論文は、のちにForget Me Not: Photography and Remembranceという本になる。
ちなみにタイトルを『写真・モノ・歴史』と訳したが、本当は原題を見れば分かるように、全て複数形であり、『さまざまな写真・さまざまなモノ・さまざまな歴史』と訳した方がよかったかもしれない。「photography」、すなわち概念としての写真ではなく、「photographs」、すなわちモノとしての写真の集合。


「序論」なんかも面白いので、読書会でもしてもよいかも。