『グランド・トゥアー』

Grand Tour: The Lure of Italy in the Eighteenth Century

Grand Tour: The Lure of Italy in the Eighteenth Century

アンドリュー・ウィルトン、イラリア・ビニャミーニ『グランド・トゥアー:18世紀におけるイタリアの魅惑』テート・ギャラリー、1996

  • フランシス・ハスケル「前文」
  • チェーザレ・デ・セタ「グランド・トゥアー:18世紀におけるイタリアの魅惑」
  • ジョン・インガメルス「イタリアの発見:18世紀のイギリス人旅行者たち」
  • イラリア・ビニャミーニ「グランド・トゥアー:開かれた問題点」
  • カタログ
    1. アンドリュー・ウィルトン「イタリアを夢見る」
    2. ブライアン・アレン「旅行者たち」
      • エリザベス・エインバーグ「ゲーテのイタリア旅行」
      • イラリア・ビニャミーニ「王家の旅行者たち」
      • ヒュー・ベルゼイ「戯画」
    3. ヨルグ・ガルムス「旅行」
      • エドワード・チェイニー「グランド・トゥアーと旅行本の進化」
    4. アンドリュー・ウィルトン「場所」
    5. ペトラ・レイマーズ「祭りと民俗」
    6. イラリア・ビニャミーニ、イアン・ジェンキンス「骨董」
    7. アンドリュー・ウィルトン「イタリアの思い出」


随分前(まだアメリカにいたころ)、ロンドンを訪れたとき、テート・ギャラリー(現テート・ブリテン)でやっていた展覧会。その時は、まださほどグランド・トゥアー自体に興味があったわけじゃない(すでに「風景」や「旅」というキーワードには、敏感に反応していたが)が、あまりにもよく出来た展覧会だったので、図録(余りにも紙が上質すぎて、ページ数の割には重い重い)。後に、買っておいてよかったと思うようになる。
蛇足かもしれないが、「グランド・トゥアー」とは、18世紀のイギリスで流行したもので、貴族などの子弟が教養を身に付けるために、ヨーロッパ、特にイタリアに行った一種の修学旅行(修学旅行といっても1年から数年の長さ)のこと。まあ、若い餓鬼がそんなとこに行ったらろくなことにならないのは、今も昔も変わらず、行ったっきりとか、騙されて借金を作ってしまう奴とかもいたらしい。で、お目付役の家庭教師として、アダム・スミスジョン・ロックがついていったというから豪勢なもんだ。
で、そいつらが、イタリアの風景画を買い漁り、本国に持って帰って(S・ローザの絵なんか、全てイギリスに渡って、イタリアには残っていないらしい)、「この絵こそがホンモノの風景や」と言って、「ピクチャレスク(絵のように素晴らしい)」という美的カテゴリーが出来たというお話になる。