名取洋之助展

記憶が薄れないうちにメモ。

戦前日本で「報道写真」という言葉を造語(確か)し、まさに実践した名取洋之助を中心とした展覧会。のちに分派した原弘、木村伊兵衛らの動き(『FRONT』などにつながる)などは、あっさりと気持ちいいほどに切り捨て、ひたすら名取に焦点を合わせた企画である。
盛りだくさんで、また非常にかっちりとした展覧会。キャプションも詳しく、まさしく「伝える」ことに重点を置いた展覧会だった。川崎は、以前来たいくつかの展覧会でもそうだったが、本当にマニアック。
図録は、資料的価値が高いと思う。「川崎は遠くて(ホントに遠い)」という方は、とりあえず図録だけでも。
日本工房の社用便箋とか封筒、素敵だった。


あと、やっぱここの常設はいつもいい。夏休みに併せて、子供向けに企画された「伝える美術」――視覚文化におけるコミュニケーションに目を向けたもの――というものであったが、例として展示されているモノがとにかくいい。写真だけで言っても、トールボット、バルデュス、ルイーズ・ハイン、植田正治などなど、そのほか版画、ポスター、マンガと非常にヴァラエティに富んだもので、素晴らしい。

しかし、ここのあまりにマニアックな蒐集方針、「市民」の理解は得ているんだろうか……