ロングフェローの文身

Longfellow's Tattoos: Tourism, Collecting, And Japan

Longfellow's Tattoos: Tourism, Collecting, And Japan

クリスティーン・M・E・グース『ロングフェローの文身:観光、蒐集、そして日本』

  1. 世界漫遊で日本に
  2. 日本を描く
  3. キュリオの楽園
  4. 日本を身に付ける〔embodying〕
  5. 日本を取り入れる


第3章、第4章をようやく読み進める。明治初年に日本を来訪した世界漫遊家、チャーリー・ロングフェローCharles Longfellow - Longfellow House Washington's Headquarters National Historic Site (U.S. National Park Service))。詩人ヘンリー・ワズワース・ロングフェローの息子で、日本にはまり、さまざまなモノをコレクションした挙げ句に、自らの身体をコレクションの場とする――すなわちタトゥーを日本で彫ってもらう。これだけで面白い話を、観光、コレクション、他者、キュリオ(珍品骨董)をキー概念に読み解いていく。むちゃくちゃ面白い。訳してみたい本のひとつ。

裏表紙の紹介文
チャールズ・ロングフェローは、ヘンリー・ワズワース・ロングフェローの息子で、1871年、横浜に来航した。ほんの少しの訪問のつもりが、二年間滞在することになる。彼は、ボストンに、写真、珍品骨董、美術品のいっぱい詰まった荷と、そして彼が「蒐集した」精巧な文身とともに戻る。彼の日記、手紙、美術コレクションは、初期のアメリカの日本文化に対する印象を劇的に明示するものであり、彼の個人的な冒険旅行は、世界漫遊旅行が両国に与えた衝撃を説明するものである。
クリスティーン・グースは、ロングフェローの経験を、幅広い観光と文化的真正性の問題とを絡めながら、19世紀の世界一周旅行における観光のイデオロギーと日本の位置を論ずる。本研究は、相互的な影響という単純なモデルを超えて、異文化間のダイナミックスをより共働的なものとして論ずる。


第3章では、世界漫遊者〔Globe-trotter〕を「コレクター」という側面から捉え、ロングフェローのコレクションHistorical and Cultural Collections - Longfellow House Washington's Headquarters National Historic Site (U.S. National Park Service)を分析する。第4章では、ロングフェローの「サムライ」姿のポートレートを手がかりに、「装う」こと、写真的身体、さらには究極のembodying(具現し、身体化すること)としてのタトゥーの問題を扱う。


グースさんは、日本美術史を専攻する研究者。一度だけお会いしたことがあって、この本のもとになった論文“Longfellow's Tattoos: Marks of a Cross-Cultural Encounter,” (Orientations 29, no.11, December 1998: 36-42)を頂いた。著書に、益田鈍翁をコレクションと産業という面から読み解いたArt, Tea, and Industry: Masuda Takashi and the Mitsui Circleや、江戸美術を江戸・京・大坂・長崎と都市別に解説した概説書、Perspectives Art of Edo Japanなどがあるid:Arataくんに以前話したことがある本です)