『インプレッションズ』30号――特集「絵とモノ――日本における視覚文化と物質文化を架橋する」

2007年に、コロンビア大のヘンリー・スミス教授の退任を記念したシンポジウムシンポジウム:「モノとイメージ」 - 蒼猴軒日録があって、ボクも参加してきたんですが、そのときの発表をもとにした論集が出ました。アメリ日本美術協会が出版している雑誌『インプレッションズ』30号Impresions: The Journal of Japanese Art Society of America, No. 30, Feb. 2009)の特集「絵とモノ――日本における視覚文化と物質文化を架橋する:ヘンリー・デウィット・スミス教授退任記念論文集(”PICTURES AND THINGS: BRIDGING VISUAL AND MATERIAL CULTURE IN JAPAN--Essays in honor of Henry DeWitt Smith”)」としてです。


ウェブサイトはこちら→http://www.japaneseartsoc.org/publications.htm


シンポジウムの概略は、以下の通りです。

2007年の5月、ニューヨークのコロンビア大学において、「モノとイメージ――日本における視覚文化と物質文化を考える(Objects and Images: Exploring Visual and Material Culture in Japan)」というシンポジウムが開催された。日本史の研究者であり、視覚文化や物質文化にとくに関心を持って研究を続けてきたヘンリー・スミス教授〔現、京都アメリカ大学コンソーシアム(Kyoto Consortium or Japanese Studies)所長〕のコロンビア大退任を記念して、その業績を顕彰するために、門下生やゼミ参加者――とくに94年の「日本近代史における物質文化」ゼミ(ボクも受講)と97年の「明治/大正の日本における視覚文化の歴史ゼミ――を中心に行われたものである。
このシンポジウムにおける発表の課題は、発表者は、一つのモノあるいはイメージを、その対象の視覚性/物質性の双方に気を配りながら詳細に分析し、それを参加者と共に討議するというものであった。テーマとして持ち寄られたのは、絵画はもとより、銅鏡、陶器、写真、織物、新聞の死亡記事、ちゃぶ台、さらには携帯電話に至るまでであり、想像以上の多様性を呈した。そして、それは日本研究のなかでの、視覚文化/物質文化研究の新たなる方向を見せたといえよう。
ちなみに、ここで発表された研究、および発表はされなかったものの投稿された論文、19篇が、先頃発刊された雑誌『インプレッションズ――アメリ日本美術協会誌』30号に掲載された。

特集の目次は以下の通り。

  • Gregory M. Pflugfelder and Jordan Sand, Guest Editors,"Foreword"(グレゴリー・ブルーグフェルダー、ジョルダン・サンド〔ゲスト編集者〕「序文」)
  • David Barnett Lurie, "The Suda Hachiman Shrine Mirror and Its Inscription" (デイヴィッド・バーネット・ルーリー「須田八幡社の鏡とその銘文」)
  • Louise Allison Cort, "A Chinese Green Jar in Japan: Source of a New Color Aesthetic in the Momoyama Period"(ルイーズ・アリソン・コート「日本における中国緑釉瓶――桃山時代における新たな色の美学の源泉」)
  • Matthew Philip McKelway, "Screens for a Young Warrior"(マシュー・フィリップ・マッケルウェイ「若武者のための屏風」)
  • Timon Screech, "The New Year's Gift and a Painting of Jupiter"(タイモン・スクリーチ「ニュー・イヤーズ・ギフト号と木星図」)
  • Miriam Wattles, "The Longevity of a Dirty Little Dictionary"(ミリアム・ワトルズ「小さな汚い辞書〔『奇妙図彙』〕の長寿」
  • Morgan Pitelka, "A Raku Wastewater Container and the Problem of Monolithic Sincerity"(モーガン・ピテルカ「楽の建水と一枚岩的誠実性の問題点」)
  • Satow Morihiro, "Photography, Handwriting and Memory in the Obituary of Natsume Sōseki"(佐藤守弘「夏目漱石の訃報記事における写真、肉筆、記憶」)
  • Ken Tadashi Oshima, "Watanabe Yoshio's Photograph of the Okada House"(ケン・タダシ・オオシマ「渡辺義雄による岡田邸〔堀口捨巳設計〕の写真」
  • Sarah Thal, Two Votive Plaques for a Rescue at Sea"(サラ・タール「海難救助のための二点の絵馬」)
  • Julie Rousseau, "A Midwife's Bag"(ジュリー・ルソー「助産師の鞄」)
  • Jordan Sand, "The Kodera Family Folding Table"(ジョルダン・サンド「小寺家のちゃぶ台」)
  • R. W. Purdy, "Hakkō Ichiu(TM): Projecting "Greater East Asia"" (R・W・パーディー「『八紘一宇(TM)』――「大東亜」を投影する」)
  • Alice Y. Tseng, "Domon Ken's Murōji"(アリス・Y・ツェン「土門拳の『室生寺』」)
  • Kim Brandt, "'There Was No East or West/When Their Lips Met': A Movie Poster for Japanese War Bride as Transnational Artifact(キム・ブラント「『二つの唇が出合うとき東も西もない』――国境を越える制作物としての映画『日本の戦争花嫁』のポスター」
  • Gregory M. Pflugfelder, "The Tiger, a Toy Gun"(グレゴリー・ブルーグフェルダー「玩具の銃、タイガー」)
  • Amanda Mayer Stinchecum, "Yours Forever More?: A Narrow Ikat Sash from Yaeyama"(アマンダ・メイヤー・スティンチカム「敬具?――八重山ミンサー」)
  • Miwako Tezuka, "Imagine Again and Again: Copies of the Portrait of Minamoto no Yoritomo by Yamaguchi Akira" (手塚美和子「何度も何度も想像せよ――山口晃による〈源頼朝像〉の複製」
  • Giles Richter, "The N501i: Mobile Phone as Portable New World"(ジャイルズ・リクター「N501i――持ち運べる新世界としての携帯電話」
  • Henry D. Smith II, "Afterword"(ヘンリー・D・スミス2世「結語」)


むちゃくちゃ沢山ありますが、それぞれのペーパー自体は短いものです。