CMネタ

クリスマス・エクスプレスの頃

クリスマス・エクスプレスの頃


電通ディレクターの三浦武彦、CMディレクターの早川和良のコンビによるCMに関する本で、制作段階での状況や裏話、さらに絵コンテなども満載で面白い。商品をダイレクトに宣伝するというよりは、ストーリーを見せて、婉曲に商品を覚えさせるタイプのCMのハシリか? 有名な深津絵里牧瀬里穂主演のJR東海「クリスマス・エクスプレス」キャンペーンのCMを含む映像を収録したDVD付き。


牧瀬ヴァージョンの「クリスマス・エクスプレス」(1989年)をはじめてじっくりと見てみたら、切り返しショットをどれほど巧みに使っているかがわかって感心した。とくに最後のショットは秀逸。Youtubeなどで確認してみて。


このCM以降、日本のクリスマス・イヴは恋人のための日になったとの話もあり、まさに「欲望の創出」の例である。


また「クリスマス・エクスプレス」を挟んで、「ハックルベリー・エクスプレス」と「ファイト!・エクスプレス」というのがあったことは、完全に忘れていた。前者は、新幹線に乗って孫たちだけで祖父母に会いに行くというもの、後者は大学に入って一人暮らしをはじめるために上京する学生たちの話。国鉄分割民営化(87年)直後のJR東海――「クリスマス・エクスプレス」は88年から――が、東海道新幹線利用の目的として観光、ビジネス以外の需要(=消費の欲望)をどのようにして創り出そうとしていたかが垣間見えて面白い。


国鉄/JRのキャンペーンについての本も紹介しておこう。まずは「ディスカバー・ジャパン」からはじまるわけだが、それにかんしては以下。


上記キャンペーンがはらむイデオロギーの批判的考察は、以下の本。以前消滅するものの言説 - 蒼猴軒日録で紹介している。

Discourses of the Vanishing: Modernity, Phantasm, Japan

Discourses of the Vanishing: Modernity, Phantasm, Japan


現在も続く「そうだ 京都、行こう」キャンペーン。ボクの謂う「京都性の構築」言説の典型例。これについては、いちど論文にまとめなければ。

そうだ京都、行こう。 (淡交ムック)

そうだ京都、行こう。 (淡交ムック)