『視覚文化リーダー』
- 作者: Nicholas Mirzoeff
- 出版社/メーカー: Routledge
- 発売日: 1998/12
- メディア: ハードカバー
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昨日のエントリで紹介した『視覚文化--イメージと解釈』があくまでも、美術史研究における革新運動という側面が強かったのに対し、アメリカで編集されたこのリーダーに、いわゆる旧来の美術史的な研究対象を扱った論文は、タマール・ガープのそれくらいしかない。
それよりも、問題となっているのは、文化であり、日常生活、ジェンダー、人種/民族、セクシュアリティなどの今日的な諸問題である。とくにジェンダー研究やクイア研究から影響が多い。これらは、社会学でも、あるいは現代のアートでも中心的な問題となっていることであり、現代社会におけるヴィジュアリティというものが、焦点となっているようである。「歴史」ではなく、「同時代」が問題となっている。「現場で使える理論」を目指しているのが、このリーダーが目指す「視覚文化」であるといってもいいだろうか。
ニコラス・マーツォーフ編『視覚文化リーダー』(1998)
- 序論/挑発
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- ニコラス・マーツォーフ「視覚文化とは何か?」
- アイリット・ロゴフ「視覚文化を研究すること」
- エラ・ショーハット、ロバート・スタム「視覚文化をナラティヴ化する--多中心的な美学へ」
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- 1,視覚文化の系譜--美術から文化へ
- 2,視覚文化と日常生活
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- マーシャル・マクルーハン「鏡のなかの女性」
- アン・レイノルズ「視覚的ストーリー」
- ミシェル・ド・セルトー「『日常的実践のポイエティーク』より」
- ジョン・フィスク「ヴィデオテック」
- マリタ・スターケン「壁、スクリーン、イメージ--ヴェトナム退役軍人記念碑」
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- 3,仮想性〔virtuality〕--仮想的身体、仮想的空間
- (a)仮想的身体
- ダナ・ハラウェイ「残像」
- リサ・カートライト「科学と映画〔the cinema〕」
- スーザン・ボルド「スレンダーな身体を読む」
- アン・バルサモ「最重要点〔cutting edge〕にて--美容整形とジェンダー化された身体の技術的生産」
- (b)仮想的空間
- ミシェル・フーコー「他者の場所」
- ジョナサン・クレーリー「カメラ・オブスキュラとその主体」
- アン・フリードバーグ「モダニティにおける移動的視覚と仮想的視覚--フラヌール/フラヌーズ」
- メアリー=ルイーズ・プラット「ヴィクトリア湖からサン・サルバドル・シェラトン・ホテルまで」
- ジェフリー・バッチェン「サイバースペースの亡霊」
- (a)仮想的身体
- 4,植民地文化、ポスト植民地文化における人種とアイデンティティ
- 5,ジェンダーとセクシュアリティ
- (a)まなざしとセクシュアリティ
- アンセア・カレン「理想的な男性性--権力の解剖学」
- タマール・ガーブ「禁じられたまなざし--19世紀後期のフランス絵画における女性画家と男性ヌード」
- ジュディス・バトラー「禁止、精神分析、異性愛的マトリックス」
- (b)視覚的なものをクイア化する
- トーマス・ウォー「第三の身体--ゲイ男性の物語映画における主体構築のパターン」
- ジュディス・バトラー「ジェンダーは燃えている--流用と撹乱の疑問」
- レイナ・ルイス「いいルックス〔looking good〕--レズビアンのまなざしとファッションのイメジャリー」
- (a)まなざしとセクシュアリティ
- 6,ポルノグラフィ
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- リンダ・ニード「『女性ヌード--芸術、猥褻、セクシュアリティ』より」
- サンドラ・バックリー「ボンテージのペンギン--日本のマンガにおけるグラフィックな物語」
- リチャード・ダイヤー「偶像の思想--ゲイ・ポルノグラフィにおけるオルガスムスと自己反省」
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原書目次は→[http://www.amazon.com/gp/reader/0415141346/ref=sib_dp_pop_toc/
ちなみに、このリーダーは、2002年に全面改訂され、半分以上の論文が入れ替えられているようである→The Visual Culture Reader。何が削られ、何が入ったか、章立てがどのように変わったか、その理由は何なのか考えてみたら面白いだろう。いずれ機会があれば。