『リーダー:視覚文化』

Visual Culture (Published in association with The Open University)

Visual Culture (Published in association with The Open University)

視覚文化に関するイギリス版のリーダーで、御大ステュアート・ホール(しかしこの人も「ステュアート」か「スチュアート」かはっきりせんな。検索しにくいったら)が編纂に関わっているオープン・ユニヴァーシティの大学院のメディア論専攻のための教科書である。表紙のロバート・メイプルソープによる黒人男性の写真が印象的である。「黒人」であること(更にゲイかも知れない)や、彼が視線をこちらに投げかけていることなど、まさに視覚文化研究の教科書に相応しい表紙である。学術書表紙ランキング1位!
アメリカ版に比べると、視覚文化クラシックスともいえるブライソン、バルト、フーコーベンヤミンソンタグドゥボール、マルヴィ、アルチュセールフロイト、ファノン、バーバなどが押さえられている点で、手堅い印象があり、教科書としては良くできていると言えるか。また、カルチュラル・スタディーズ第二世代のヘブディッジが入っている点、また上記の「クラシックス」のほとんどがカルチュラル・スタディーズの古典でもあることから、とりあえずこの本においては、「視覚文化」とは、「カルチュラル・スタディーズ視覚版」と捉えられていると言っていいだろう。やっぱりアメリカよりマルクス主義色が強い。
もう一つの特徴は、1章を使って、写真論--しかも80年代以降のいわゆるポストモダン写真論の成果--が紹介されていることだろう。その代わり、ここでも美術史色は後退している(プロパーはブライソンくらいか)。
ただ、アメリカに比べるとクイア研究が少ないのは、やっぱりゲイ・カルチャーは、アメリカが本場だからかな。
よく出来たセレクションだと思う。
ジェシカ・エヴァンズ、ステュアート・ホール編『リーダー--視覚文化』

  • ジェシカ・エヴァンズ、ステュアート・ホール「視覚文化とは何か」
  • 1,視覚的なものの文化
  • 2,写真的意味を規定する
    • C,写真を理論化する
    • D,写真における制度と実践
      • ダグラス・クリンプ「美術館の古き、図書館の新しき主体」
      • アビゲイル・ソロモン=ゴドー「矛盾とともに生きる--供給側の美学の時代における批判的実践」
      • ジョン・タッグ「証拠、真実、秩序--監視の手段」
      • ジェシカ・エヴァンズ「かよわいモンスター--身体障害者を作り上げる」
      • ドン・スレーター「大衆写真をマーケットする」
  • 3,見ることと主体性

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