風景の経験

紹介しようと思いながら、なかなか通読する時間がとれずにいる本。

風景の経験―景観の美について

風景の経験―景観の美について

欧米の風景論においてよく参照される本(原著は1975年)で、ようやく翻訳される。著者は地理学者で、コンラート・ローレンツの『ソロモンの指環―動物行動学入門 (ハヤカワ文庫NF)』で述べられる捕食動物が狩りをする時、自らは見られない場所に身を置きながら、眼前を見渡すことができるような位置を取る(狩りはしないけど、うちの猫どもも偶にやる)という行動論を援用して、「眺望=隠れ家理論」というものを本書で提示している。確かにピクチャレスク絵画や写真におけるフレーミングやサイド・スクリーンの問題を考えると妙に納得する。でも、こういう科学的な根拠を人文研究に持ち込むことは、歴史的社会的コンテクストを無視して、本質を語ることに往々にしてなるので、眉には唾を充分付けながら、読み進めていこうと思う。