『遙かな町へ』

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先日、フランス/日本の翻訳エージェントをしている方から、谷口ジローさん(一度だけちらっとお会いしたことがあるので、「さん」付けで書いてみる)と仕事をしているという話を聞く。なんでと訊くと、現在フランスでの彼の盛り上がり方は凄いという話。上記の本などは、日本での発行部数の数倍は売れているらしく、いわゆる「マンガ/アニメ」ファン層を越えた支持のされ方らしい。『事件屋稼業 1 (1)』以来のファンとしては、嬉しい限り。彼の絵のスタイルは、フランスのBD——とくにメビウス——からの影響が多大であるという話を聞いたことがあるので、なかなか面白い文化の往還の一例かとも考える。


谷口作品は結構読んでいるはずだけど、たまたま読んでいなかった『遙かな町へ』を取り寄せてみる。48才の男性が、タイムスリップして、14才の自分の身体にはまりこむというSF。何と言っても48才の知識と経験を持った14才だから、勉強はできるし、女子にはもてるし、たまには酒も飲んだりして……という展開になる。14才のときに父が失踪した謎を探るという話が中心となって展開する。あの緻密・精密な絵で、1960年くらい(2年後に力道山が死ぬという話が出てくるので、61年か)の鳥取は倉吉の町を、ノスタルジアを感じさせずにさらっと描くあたり本領発揮か。凄く面白くて、一気読み。絵のディテールを味わう暇もなかったので、また今日でも読み返そう。お薦め。


↓も一巻目だけ取り寄せてみた。

シートン 第1章―旅するナチュラリスト (アクションコミックス)

シートン 第1章―旅するナチュラリスト (アクションコミックス)

シートン動物記』かぁ。子供の頃、夢中になって「狼王ロボ」とか読んでいたなぁ。
そういえば、田中純氏の『都市の詩学―場所の記憶と徴候』でも、森山大道→ギンズブルグの「推論的パラダイム」→シートンの自然観察→超芸術トマソン連歌というアクロバティックなまでの論の展開のなかで、効果的に提示されていた。