ジョン・トムソン

ある雑誌から依頼された短い原稿のために、19世紀の写真師/地理学者のジョン・トムソンについて再び調べている。


彼が有名なのは、香港にスタジオを構えて、中国のそうとう広い地域を撮って、写真文集を出版したこと。そこに見られる地理学的なまなざしの問題については拙著『トポグラフィの日本近代―江戸泥絵・横浜写真・芸術写真 (視覚文化叢書)』で触れている(と、ちょっと宣伝)。

    • トムソン写真の世界というサイトで、上記の写真とテクストを全部見ることができるというのに今日はじめて気づいた。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所情報資源利用研究センターの事業だとか。えらい!


今回は、中国写真ではなく、イギリス帰国後に彼が行ったロンドンの路上での生活の記録写真について調べている。ジャーナリストのアドルフ・スミスという人と組んで、ロンドンの路上生活を報告する写真雑誌を発刊し、それをその後まとめて写真集Street Life in Londonとして、1878年に発行したのである。
今日、その復刻版を手に入れた。中国の写真集と同じドーヴァー社から出版されている。

Victorian London Street Life in Historic Photographs

Victorian London Street Life in Historic Photographs

これまで見たことのある写真は、路上における貧困や困窮を扱ったものだけだったので、全編そういうものかと思っていたけど、実際見てみると、そういうのは一部で、見世物や露店、そしてストリート医者(なんか『ドリトル先生』に出ていたな)に至るまで、相当に幅広く「路上」を対象にしていたことが面白い。以前から興味を持っている「路上/ストリート」の問題ともつなげられそう。


以下の本も注文仕掛けたが、おそらく上記と同じようなものだと思われるので、とりあえずはキャンセル。

Street Life in London

Street Life in London


拙著でトムソンについて論じる際に主に依ったジェームズ・ライアンの文献も再読。『ロンドンの路上での生活』についても面白い分析が加えられている。

Picturing Empire: Photography and the Visualization of the British Empire

Picturing Empire: Photography and the Visualization of the British Empire

この本の表紙に使われている写真、大好き。サファリ・スーツで巨大な写真機と銃を携え、アフリカの荒野を行くヨーロッパ人写真家。コロニアル写真とはどういうものかを端的に説明している。


トムソン&スミスに先立つ1840年代にロンドン下層社会を報告したヘンリー・メイヒューのテクストの一部を訳出した以下の本も購入。

ヴィクトリア朝ロンドンの下層社会 (MINERVA西洋史ライブラリー)

ヴィクトリア朝ロンドンの下層社会 (MINERVA西洋史ライブラリー)


以下の本も再読しないと。

路地裏の大英帝国―イギリス都市生活史 (平凡社ライブラリー)

路地裏の大英帝国―イギリス都市生活史 (平凡社ライブラリー)


去年、北京の世界美術館(http://www.worldartmuseum.cn/sjysg_en/index.shtml)というところでジョン・トムソンの中国写真の展覧会が行われたよう(ジョン・トムソン写真展、北京で開催 - 中国国際放送局)。図録が出ていたので、発注。

China: Through the Lens of John Thomson (1868-1872)

China: Through the Lens of John Thomson (1868-1872)


という訳で、編集のツツイさん。とりあえず着手しております。