「写真と仏像」

もう一本、拙論が公刊されています。

  • 佐藤守弘「写真と仏像――〈仏〉の美-化と商品化」『文化学年報』第62輯、同志社大学文化学会、354-364、2013年3月
    • はじめに/1.仏像写真の系譜/2.仏像写真と美術史/3.仏像写真と奈良観光/終わりに


『文化学年報』は、同志社大学文化学会の紀要で、今号は太田孝彦先生の退職記念号です。1997年に同志社の美学芸術学の博士後期課程に入って以来、岸文和先生との共同ゼミで、徹底的に指導して頂きました。感謝の気持ちを込めて、「美術史」の問題に関わる論文を投稿しました(変な角度からですが)。


1922年から現在も続く奈良の写真館/出版社、飛鳥園の創業者、小川晴暘(1894-1960)が撮影した仏像写真の分析を中心とした論攷で、写真というメディアの登場とともに、本来は信仰の対象であった仏像が、一方では美術史という視覚文化によって「美」的なものとなり、同時に観光という視覚文化によって、流通する商品となっていく時機について考察したものです。
もともとは、去年出た共同研究の報告書に書いた論文(「仏像写真論序説--仏と美術と観光と」)で言い足りなかった部分を加筆したものなのですが、字数制限のため、また言葉足らずになりました。もう一本書かないといかんかな。ちなみにおおもとは、2006年の『アサヒカメラ』で大竹昭子さんと対談した「PHOTO WATCHING[写真を語る]――京都と奈良の観光写真」の際に奈良と写真の関係について調べたことが発端です。


実は抜刷だけ送っていただいたものの本誌全体はまだ手にしていません(だから紹介が遅れた)。記念号なので(しかも太田先生だけではなく、他専攻の退職された先生方の記念号との合併)ハードカヴァーで装丁しなおしておられるのだと思います。


『文化学年報』という雑誌を所蔵している図書館も限られていると思うので、PDF化したものを以下に置いておきます。御高覧いただければ。