『笑う写真』

大学からの帰りに何の本を読もうかと書棚を見て、久しぶりに再読することにした。南伸坊『笑う写真』(ISBN:4480027866)。電車の中で笑いをこらえながら読んだ。と同時にやはり秀逸な写真論であると感服。そのなかから、女性モデルを素人、マルベル堂、写真館、三分間写真、プロ・カメラマン)(滝本淳助)、監視カメラ、記念写真屋が撮ったらどうなるかという「写真うつりの写真術」の章から引用してみよう。

われわれはいろいろなシチュエーションで写真に撮られる。[...]
皇居前広場二重橋の前で記念写真屋さんに写真を撮って貰ったりする。そうして、そういう写真が、いかにもそういう写真になっているのをオモシロイと思うのだ。[...]この記念写真屋さんとモデルの関係は、だから「オノボリさん」、あるいは「二重橋に特別か関心を持つ人々」と、記念写真屋さんの関係ということになります。文字通りに二人の距離は遠いものです。[...]
同じように、三分間写真には三分間写真の距離があり写真うつりがあり、ポラロイドのスナップにはその距離と関係が[...]写っていて、写真うつりを形成しているというワケです。[...]
「他人様あっての自分」という言い方がある。自分を規定するのは他人様である、というわけだ。この関係を、つまり写真というのは視覚化しているといってもいいだろう。写真は関係を写し出すのだ。

写真と肖像、アイデンティティの問題を実に穿った発言と言うべきでないか。