ジャズの入門書

相倉久人相倉久人の"ジャズは死んだか"』音楽之友社、1977年。
中学生くらいでジャズを聴きだして、何冊かジャズの入門書を読んだ。勉強にはなったが、何かバップ至上史観で、どうも違和感を覚えていた(ラムゼイ・ルイスとかボロクソだったような)。でも、相倉久人のこの本は本当に肌にあった。ちゃんとジャズの歴史を書きながら、伝統保持なんてくそ食らえという感じで。久しぶりに本棚から取り出してはじめの方を読んでいるとこんなくだりがあった。

「黒人がやっているとか、白人がやっているとかということは別問題として、黒人がやっている音楽であっても、その中にはヨーロッパ的要素とアフリカ的要素が存在し、それが、ある部分では結合し、またある部分では反発しあいながら、ごった煮のようにできあがっているのがジャズなのだ。
 生まれ育った土地や文化から切り離された黒人は、いろいろな文化的混乱を経験して、徐々に変化していく」(19ページ)。

文化のハイブリディティの問題とか、ディアスポラの問題とか、今問題となっていることがが既に指摘されている。そうか、他のジャズ本が様式史的であったとすれば、この本は社会史的であったのだ。こういう本こそが今読まれるべきだと思うが、残念ながら絶版。
そういえば、憂歌団のファースト・アルバムのライナー・ノーツは、相倉久人タモリの対談だったことを思い出した。