風景論ビブリオ
W・J・T・ミッチェルが、Landscape and Powerの第二版序文で挙げている(あるいは示唆している)空間/場所/風景論のための前提条件となる文献。直接、書名まで言及されている文献には、アンダーラインを引いておく。その他は、この文献だろうなと僕が考えるもの。
- 現象学から人間主義地理学への系譜
- マルティン・ハイデガー「建てる・住まう・思索する」(『ハイデッガー全集』7巻、未刊?)、『言葉への途上 (ハイデッガー全集)』
- ガストン・バシュラール『空間の詩学 (ちくま学芸文庫)』
- ここでは言及されていないがエドワード・レルフ(『場所の現象学―没場所性を越えて (ちくま学芸文庫)』)やイーフー・トゥアン(『空間の経験―身体から都市へ (ちくま学芸文庫)』)、オギュスタン・ベルク(『日本の風景・西欧の景観 そして造景の時代 (講談社現代新書)』)などもこの系統として挙げられる。
- マルクス主義からポストモダン地理学への系譜
- アンリ・ルフェーヴル『空間の生産 (社会学の思想)』
- ミシェル・ド・セルトー『日常的実践のポイエティーク (ポリロゴス叢書)』
- ミシェル・フーコー「他者の場所--混在郷について」『ミシェル・フーコー思考集成〈10〉倫理・道徳・啓蒙』
- デイヴィッド・ハーヴェイ Justice, Nature and the Geography of Difference
- エドワード・ソジャ『第三空間―ポストモダンの空間論的転回』
- 文化地理学
- J・B・ジャクソン Discovering the Vernacular Landscape=ヴァナキュラー風景に関する研究においては、重要で面白い人物なのだが、アマチュアっぽいこともあって日本ではほとんど言及されていない。
- 美術史
- エルンスト・ゴンブリッチ『規範と形式―ルネサンス美術研究』
- ケネス・クラーク『風景画論 (美術名著選書 4)』
- サイモン・ピュー編 Reading Landscape: Country, City, Capital (Cultural Politics)
- ゴンブリッチとクラークは第一版の序で、モダニズム的な風景画に関する言説--風景を「物語の排除」という点から語り、抽象画の先駆として捉える線的、進化論的言説--の代表格として挙げられている。もちろんミッチェルの標的。ピュー編の論集は、それに対するポストモダン的なアプローチ--記号論や精神分析を使い、風景表象におけるイデオロギーを読み解く--の代表。ミッチェルは、これもいわば静態的な図式であるとして、乗り越えるべき対象であるとする。で、このような「風景とは何か」「風景とは何を意味するのか」という問題だけではなく、「風景とは何をするのか」というアプローチ=文化的な実践としての「風景」を提示したのが、第一版。