聴覚文化と吸血鬼

口のすべて - 今日から四百経由で知った本。
慶應の教養研究した入門書シリーズ。ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ (創元推理文庫)』をさまざまな方法で読み解くもの。
第1章での「要約的真理」と「細部に宿るフロイト的真理」という図式は、メタファー/メトニミー、アイコン/インデックス、絵画/写真、風景表象/痕跡採集といった対立を分かりやすく述べる時に使えそう。
以降の各章は、メディア論、セクシュアリティ精神分析、社会史/ポストコロニアル批評といった順で『ドラキュラ』を読み解く訳だが、特に第2章「表の真理、口を通して裏の世界へ」における聴覚文化/複製文化論からの視点が面白い。著者の注目するところは、『ドラキュラ』というテクストが、新聞や手紙、そして日記のコラージュとして構成されているところで、とくに日記が速記や蓄音機に録音された「声」をタイプライターで起こしたものであるというところ。文字による「声」の抑圧と、最後に仕掛けられた転倒。ここから、19世紀における聴覚/音声文化vs視覚/スペクタクル文化の話へと拡がる。これは、学生にすすめられるし、また講義(とくに写真論)での語り方の参考になる。


同シリーズの他の本も面白そう。


さらに、ドラキュラといえば、フランケンシュタインでしょ。メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))』におけるピクチャレスクな描写にジェンダーエスニシティにおける〈排除〉の構造を読み込む長野論文。勉強になりました。

こんなのもあった。知らなかった。


ここまでくれば、狼男ネタも欲しいところ。ついでに怪物くんも。