アイデンティフィケーション

morohiro_s2005-03-27

書類に添付するための証明写真を撮りに行く。もともとの面の問題なのは分かっているが、証明写真になると、とにかく人相が悪くなる。必要以上に緊張してレンズをにらんでしまうのも一因だとは思うが、やっぱり撮り方だろう。写真史を振り返れば分かるように、今の証明写真、すなわちある特定の人物を同定(アイデンティファイ)するためのメソッドというのは、19世紀のパリ警視庁でベルティオンがあみだした司法写真の撮り方に、その淵源がある(ただしベルティオン法の場合は、正面と横顔の二つを組み合わせるものだが)。で、犯罪者を同定するために、貌の細かな特徴が全て見えるように、全ての部分に影が出ないようにする訳だ。いわゆるレンブラント照明を使ってはいけない。で、今日の証明写真も同じような方法をとる。というわけでただでさえ人相の悪い人間が、さらに殺伐とした雰囲気を醸し出してしまう。
ところで、アメリカで学校のIDカード用の写真を撮って貰ったとき驚いたのは、写真家が被写体を笑わせようとすること。僕の場合は、やはり身に付いた習性のせいか笑うことは出来なかったが、友人のを見せて貰ったらにこやかに笑っている写真が多かった。あの習慣はどこから来るのだろう。
一方で、一時労働のヴィザ用の写真は、4分の3正面から耳が写るように撮る方法だった。「耳の形は変わらないから」とかいう理由だと聞いたが、これこそ犯罪者扱いである。大学の写真のおおらかさと、政府関連の写真の厳しさ。これぞアメリカ(いかん、本質論的な発言をしてしまった)。しかし、あの頃はアメリカでも指紋までは採られなかった。日本の指紋押捺法の非道さを感じたもんだった。でも今やアメリカでは、9.11以来、ヴィザを持っている人間は、指紋どころか、虹彩パターンまで記録されているらしいが。