『はじめての言語学』

はじめての言語学 (講談社現代新書)

はじめての言語学 (講談社現代新書)

大学の本屋に平積みにされていたので、買ってみた。「学問」としてではなく、「科目」として言語学を紹介するという趣向の入門書で、興味を持った学生に勧められそう。たとえば、ソシュールとか「シニフィアンシニフィエ」という言葉を使うんじゃなくて、「言語記号は形と意味からできている」とすっきりさせる(もちろん、章の終わりについている「読書相談室」っていうところでそういう用語は、ちゃんと紹介されている)。一回生相手の講義とかだと、こっちの方がいいかも。
イヌイットの言語には、「雪」を表す言葉が30以上ある」って話、あちこちで紹介されているし、あれはどうも孫引き、孫引きの末にでかくなった話で、実は4種類くらいしかなくて、英語とさして変わらないらしい。やべぇ〜。講義で喋ってるよぉ。


途轍もなくややこしい発音の例として出ている南アフリカのコサ語ネルソン・マンデラもこの言葉を喋っているらしい)って言語。「チェッ」っていう舌打音とか、放出音っていう、喉の奥の声門を力んで閉じて、肺から上がってくる息を溜めて、その圧力で声門を押し開くと喉の奥から出る「ポコン」とか、「グエ」っていう音とか、すごいらしい(ゼッタイ、ボクには無理やね)。あまりに凄くって、「コサ語を聞く会」っていうのができたり、英語教員が「ねえ、コサ語を聞かせてよ」って研究室に入ってきたりするらしい。聞いてみてぇ〜。『世界ことばの旅―地球上80言語カタログ (CDブック)』っていうCDブックに入っているらしい。買ってしまおうかな。


ちなみに、バルトとかラカンとかの言語学利用には、「?」という感じ。直接に著者のことばとして言われているわけじゃなくって、ムーナン『言語学とは何か』に、言語学流用のブラック・リストといって載っているらしい。そういえば、こないだ、講義準備でセミル・バディル『イェルムスレウ―ソシュールの最大の後継者』を読んでいたら、そこでもバルトの「外示/共示」は相当に批判されていた。まぁ、ガチの言語学からしたらそうなんだろうな、とは思う。